【660PV突破しました!ありがとうございます!】たたかい 番外編 〜天秤〜《たたかい 続編・其の壱》


《今日は思ってたよりも早く終わったな》
「だねー」
煌と咲羅が話しながら、並んで歩いていく。
その後ろから、ハル、弘、楼、そして狼鬼が歩いていった。
《ハル、他のみんなは?》
狼鬼がハルの方を見て尋ねた。
「今日は町が近いから、先に帰ってもらったよ」
「オオカミ13頭も引き連れて歩いてたらどう足掻いてもすごく目立つもんな」
弘が独り言のように呟いた。
「うーん、悪いことはしてないし、討伐にはみんな必要不可欠なんだけどなぁ...」
ハルが困ったように頭を掻いた。
「ハル姉ーーっ!弘ーーっ!」
咲羅の馬鹿でかい声が前から響いてきて、2人と2頭は我に返った。
「お祭りやってる!行っても良いでしょ?」
「え、うん、良いよ。でも...」
ハルはぶつぶつと呟いて、困ったようにオオカミ達を見つめた。
《ああ、俺らそこで待ってるよ》
《なんかお土産買ってきてね》
《あんまり遅くなるなよ?》
オオカミ達はそう言うと、音もなく木の枝葉の中に姿を消した。
「聞き分け良いけど、ちゃっかりしてるなぁ」
苦笑いする弘に、ハルもつられて笑う。
「ほらほら、ハル姉、弘、行こ?ね!」
咲羅に手を引かれて、2人は夏祭りの喧騒の中に入っていった。

「あ」
ハルが声を上げて、咲羅と弘が揃って振り返った。
「どしたの?」
「いや、あれ。久しぶりに見たなぁと思って」
ハルが指差した先には、「お面」と書かれた露店が建っていた。
狐、天狗、般若など、色とりどりのお面を見て、3人は思わずわぁと声を上げた。
「ねぇ、良いこと思いついた!3人お揃いでお面買おうよ」
咲羅の提案に、ハルと弘もぱぁと顔を輝かせた。
「私、狐が良いな。咲羅と弘は?」
「狐。般若は怖い」
「俺も狐かな。天狗は色んな所にぶつけそう」
「現実的な理由だね...」
「じゃあ、ハル姉も弘も狐?」
「うん」
咲羅の問いに、2人は揃って頷いた。
「俺、黒い狐が良い」
「あたしはあの赤い子」
「私...うーん...どれが良いと思う?」
「欲しいのがない?」
「ううん、どれも綺麗で」
首を傾げるハルに、咲羅が言った。
「あの白い子は?なんか、ハル姉っぽい」
「え?あれ?...どの辺が?」
「なんか柔らかい印象のところとかじゃないの?」
弘が横から口を挟んだ。
「そうそう、笑った顔もハル姉っぽい」
「私、狐みたいに笑うの...?」
「狐みたいじゃなくて、ほら、優しそうなところとか。怒ると怖いけど」
「弘?」
ハルが弘の方を見てニコリと笑った。
「ゴメンナサイ」
弘はぼそぼそと呟いて目を逸らした。
「はは、でもありがと、じゃあそれにしようかな」
「じゃ、決定〜!」
咲羅の楽しげな声に、弘とハルは顔を見合わせて笑った。