【660PV突破しました!ありがとうございます!】たたかい 番外編 〜天秤〜《たたかい 続編・其の壱》


「...俺は」
弘の声が震えた。
「もう、誰も、居なくなってほしくない」
「うん」
ハルが悲しそうに笑った。
「私もだよ」
ハルが続ける。
「だから、狼鬼と先生に協力してもらったの。相談しなくて、ごめんね」
「なんで相談してくれなかったんだよ?」
弘が少し刺々しい声で訊いた。
「...止められるだろうなって思って」
居心地の悪い沈黙が流れていく。
《...ハル》
鉛のように重たい空気に耐えかねたように狼鬼がハルを見た。
《いま俺ここに必要?》
「必要だよ」
《役割は?》
「この重ーい暗ーい居心地悪ーい空気をどうにかして明るくする役割」
《暗ーい重ーい居心地悪ーい空気を俺だけで元に戻せと?》
「狼鬼違うよ、重ーい暗ーい居心地悪ーい空気だよ」
《あーはいはい、その重ーい暗ーい居心地悪ーい空気をなんとかしろと言うんだな、うん、無理だよ》
弘が堪えきれずに笑った。
「2人とも何やってんの?」
「この重ーい暗ーい居心地悪ーい空気をどうしようかねっていう相談」
「相談だったんだ、俺は落語かと思ったよ」
《落語は1人でやるだろう》
「確かに」
ハルが楽しそうに笑った。
笑い声を立てながら、畳にごろりと寝転ぶ。弘もハルを真似て横になった。
「ハル」
「ん?」
ハルが息を弾ませながら弘を見る。
「もし俺より先に逝ったら殺すからな」
「そのお言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
悪戯っぽく笑ったハルを見て、弘も少し呆れたように笑った。