クララ嬢だけではなく、イザベラ嬢までもが俺を見ている。
 とんでもない質問を問いかけられている訳だが、答えは決まっている。

「……男目線からの意見になってしまいますが、イザベラ嬢はどう考えても、魅力的なプロポーションをしていると思います。それに、個人的には少し肉付きが良い方が見ていて安心します」

 イザベラ嬢だけでなく、クララ嬢もどういう意味だと首を傾げる。

「安心する?」
「ええ。女性が同じ女性に対して良いと思っているプロポーションと、男性が異性である女性に対して良いと思うプロポーションは、少し違うと思うんです。言い方が悪くなってしまいますが、女性が痩せていると感じているプロポーションは、個人的には肉付きの薄い体型だと思っています」
「そうなんですか⁉」
「やっぱりそうなんだ」

 個人的な考えになるが、俺の言葉にイザベラ嬢は驚いたように反応し、クララ嬢は納得の表情を浮かべる。

「なので俺個人としては、イザベラ嬢のプロポーションは十分に女性として魅力的だと思います」
「そ、そうですか。ありがとう……ございます」

 俺の正直な感想に、イザベラ嬢は再び顔を真っ赤にして俯き、黙り込んでしまう。
 顔を赤くするイザベラ嬢をニヤニヤと見るクララ嬢。そんなクララ嬢が笑みを一層深めて、再び問いかけてくる。

「ウォルターさん、私の事も魅力的な女性だと思いますか?」

 クララ嬢から再びのキラーパスに、俺は意表を突かれて黙ってしまう。
 正直に言って、クララ嬢の質問に答えるのは凄い恥ずかしかった。
 女性を面と向かって褒める事など、女性慣れしていない俺には難易度がもの凄く高いのだ。
 だが一人を褒めて、もう一人には何も言わないと言うのは失礼にあたるだろう。色々とパニックになりながらも、クララ嬢に答えを返す。

「……クララ嬢も、イザベラ嬢に負けず劣らず十分に魅力的なプロポーションをしています。正直に言えば、魅力的過ぎて……その…………目のやり場に困ります。それぐらい、お二人は魅力的です」
「…………ありがとうございます」

 クララ嬢も、イザベラ嬢と同じように真っ赤になって俯き、黙り込んでしまう。
 そして俺も、男として色々とぶっちゃけまくり、その事が恥ずかして頬が熱くなって黙り込んでしまう。
 一旦自分を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸をして、紅茶を飲み、美味しいお菓子をいただいく。
 暫くすると、二人も気持ちを落ち着かせるためなのか、やや赤い顔をしながらも紅茶やお菓子に手を付け始める。
 そんな気まずい空気の中、イザベラ嬢の部屋の扉がノックされる。

「イザベラ、入ってもいいかしら?」

 扉の向こうから、凛とした雰囲気を感じる女性の声が聞こえてくる。

「お、お母様?ええ、入ってもいいわよ」
「お邪魔するわね」

 イザベラ嬢のお母様、つまりは公爵夫人である女性が、扉を開いて部屋に入っていくる。
 俺は不敬にならないように椅子から立ちあがり、頭を下げて挨拶をする。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。ベイルトン辺境伯の三男、ウォルター・ベイルトンと申します」

 俺の挨拶にフッと微笑みを浮かべ、公爵夫人は挨拶を返してくれる。

「私はイザベラの母、アンナよ。よろしくね。貴方の事はよく知っているわ。ベイルトンの麒麟児、辺境の守護者でしょ?」
「私はそんな大層な存在では…………。私の父や兄たちに比べたらまだまだです」
「ふふふ、謙虚なのね」

 アンナ公爵夫人は微笑みながらそう言う。
 だがこの人クラスにもなれば、笑顔の仮面をつける事など造作もない。
 本心では何を思っているのか分からない。俺の事も、内心ではどう思っているか。

「それで?イザベラとクララ、どっちと付き合ってるの?」

 少し緊張しながら、何を言われるかと身構えていた所に、アンナ公爵夫人のぶっ飛んだ質問が飛んできた。