次の日の朝、いつもより頑張って早く起きた。萌に迷惑かけちゃったし。
ゼミに行くと、何故かそこには珍しく悠真以外の全員が揃っていた。しかもﾆﾔﾆﾔしながら。
ただ今の時間、8時ちょうど。

「おはよ」
『おはよ/おはようございます！』
「え？何急に？」

いつもは揃って挨拶しないのに今日だけ何もかも全ての行動が全員揃っている。ほんと気味が悪くなるほどに。

「ﾆﾔﾆﾔ ねぇ璃奈、何か言われた？ﾆﾔﾆﾔ」
「え？誰に？てかそのﾆﾔﾆﾔやめてくんない？なんかウザい」
「ﾆﾔﾆﾔ ごめんってー！！誰って……朝木くんだよ！」
「あぁ、悠真？何も言われてないけど？」
『はぁ』

すると、一斉にため息が聞こえた。

「ねぇ、今日何で皆そんなに息が合ってんの？ほんと気味悪いんだけど」
「それはねぇ、私達の心が一つになったわけですよー」
「何言ってんの？ほんとに」

思わず、自分の体ごと後ろに引く。

「ちょ、引かないでよー！！つまり、皆考えてることが一緒なの！」
「はぁ……？」

意味は分かるけど、いや、言ってる意味はほんとに分かるんだけど……とにかく、ほんとに意味分かんなくて思わず間抜けな声が出てしまった。

「まぁ、そういう訳だから気にしないで」
「うん、分かった……とでも言うと思った？萌？」
「え！言ってくれないのー？璃奈さまさまー！！」

ここでもまた目をうるうるとさせながら上目遣いをしてくるけど、その意味は無し。

「様をつけても駄目だからね！」
「マジか……」

萌はわざとらしく肩を大きく落とした。

「それで、何考えてんの？」
「えぇっと、それはですねぇ……」

何やらｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ。

「何？言えない理由でもあるの？考えてること一緒って言ってたのに？」
「えっとねぇ、いやーそれはそうなんだけどね。まぁ……ざっくり言うと皆、朝木くんに期待してたってこと」

萌が言っていることを一つ一つ理解しながら考える。それでも、何か悠真に期待することがあるかというと、私は無いと思っているからどういう事なのかあまり分からなかった。

「……何で？」
「流石にそこまでは言えないかなぁ」
「え！教えてよー！！」
「いくら璃奈でもだーめ！でも、追々気付くと思うよ」
「も！しょうがないから今日のところはこれで許してあげる！」

すると、ﾊﾟｧｯと顔を輝かせながら私に向かって飛びついてくる。

「ありがとー！！璃奈！大好き！！」
「はいはい」

ｸﾞｲｯと一瞬体が仰け反ったものの、なんとか萌を支えながら倒れずに済んだ。そんなことは露知らず、未だに萌は私に抱き着いたまま離れない。流石に長すぎて困っていると

「おっす！」

良いところに悠真が入ってきた。それから私に気付いて

「璃奈何してんの？もしかして……！！いやでも、もし本当だったら……」

何やら一人で勘違いしているよう。何か言わないとそのまま勝手に変な誤解を与えてしまう気がする。

「悠真！違うからね！！それより萌、流石にさっさと離れてよ！」

思い切り顔をしかめる萌。

「ちぇ」
「ちぇじゃないでしょ！」
「えーだってねぇ？」

だってねぇ？なんて言われても私にとっては迷惑でしかなかったんだからこう言われても仕方ないよね。

「そんなこと言うなら、もう一生ｷﾞｭｰしてあげないよ」

流石にここまで言われると参ったようで

「え！それはダメ！！それは困る！」
「じゃあ？」
「はいっ！離れます！！離れるよー！！」
「ならよろしい」
「良かったぁ！」

なにやら本気で安心しているらしい、萌の姿に思わず笑ってしまった。