青い空、白い雲、星の輝きは夜までお休み。
今は私たちの時間。
右目はいつもの教室、左目で外の退屈な景色を確認しつつ私は小さく欠伸をした。
怖いくらい静かだ。
変化は緩やかで、生温い、これが平和というものだと認知してしまっている自分に思わず失笑してしまった。
教師は睨むように私を見たが、そこから何が起こるわけではない。
決して堕落した世界だというわけではない。
低刺激な日常こそが、甘露なんだ。
欲望に駆られて全てを求めてはいけない。
ノートの白い行に黒板の文字を写し書く。
先人たちの知識を糧に、未来を創る。
その繰り返しが、小さな積み重ねが力になる。

とは言え…

今日と明日の差異の少なさに飽き飽きしてしまう。

よく私はこんな生活に何の疑問もなく納得していたものだ。

まぁ、此処の方がまだ良いか…どちらも楽園にはほど遠いけど…
救いはないのだから、あったらあったで後が怖いし…
まぁ、どちらも地獄の類かもしれないけど。

幸せが何処にあるのかなんて誰も知らないだろうし…。

「…井。 青井!答えは?」
思わず、名前を呼ばれて勢いよく立ち上がり、椅子が後ろに倒してしまった。
「イエッサー!」
条件反射的に、私は思わず声をあげた。
「何がイエッサーだ!ここは軍隊じゃない!答えは?」
黒板を指さしながら、教師が私を見る。
「2?」
「っち…正解だ!耳だけじゃなく目も此方に向けるように」
「イエッサー」
「ここは学校だ!返事はハイでいい!」
「はい!プロフェッサー!」
「プロフェッ?もういいしゃべるな座れ!」
私は振り返りながらは倒れた椅子を腰を折り手を伸ばし起こして座った。
一瞬目のあった教師の顔が少し赤くなっているような気がした。
私が不思議に思い首を傾げる。
教師はすごい勢いで背を向けて黒板に向かって大きく息を吐きながら、黒板消しで乱暴に文字を消しはじめる。
「ちょっと、先生!」
「まった!」
「ふあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
一部の生徒が悲鳴を上げながら右手から煙が出そうな勢いでペンを走らせてノートに転写していた。
私の隣の女子はバレないようにスマホで黒板の写真を撮っていた。
どうやら、黒板の文字を書ききれなかった同級生に休み時間に売りつけるつもりらしい…
教科書もまともに読まない奴が大半なのに…上手く行くとは思いませんが…

私の望んだ日常がいまここににあった。

争いはあるけど戦いは無い、そんな場所にいる。
私はそれだけで満足だった。

「アーオイ中尉…フォクス XYZ11・15・00、敵G1二機距離600接触まで30」
「フォクス了解!11・15・00にて迎撃する!捕捉次第攻撃に移る許可を!」
「ダメだ、捕捉後確認し攻撃しろ!全ての火器の使用を許可する」
「やったフルコースだ!フォクス了解!捕捉した確認!うわっ」
「フォクスどうした応答しろ」
「被弾した応戦する」
「何処をやられた」
「左前脚部小破、作戦には支障はない」
「無理はするな」
「出来るだけ善処する」
敵のデザートカラーの多脚戦車G1一台がガトリング砲を放ちながら接近してくる。
もう一台は大きく左に旋回をしながらこちらの側面を狙ってくるようだ。
私は、左側面に誘爆粉塵型弾幕を展開、防御用の装備ではないけれど、ブースター代わりに丁度いい。
相手が打ってくれば、敵と自機の間に爆風の壁が発生し直撃を緩和、その勢いに任せて右に平行移動し正面からくる敵の左側面に50ミリ貫通弾をお見舞いしてやる!