「なあみんな聞いて、みきちゃんと付き合えなかったんだけど」

そんな少しだけ苦しい空気をとっぱらって海斗がでかい声で言う。

「え、まじ」

「いやそんなこともあるよ」

「次行こ次!」


紫音の話はどこへ行ったのか、みんなが海斗の失恋話に気を取られる。


「いやそれでなんか向こうは友達としては好きだって思ってただけらしくて」

「いや思わせぶりすごいな〜」

ふと目があうと海斗はこっちを向いてニヤッとしながらダサいポーズを決めている


わたしが気まずい思いをしていたのにこいつは気づいて空気を変えている、そしてこいつはそれを自慢げに私に合図するのだ。


苦笑しながらも案外海斗は周りの人を見てるな、と再認識する。



ポーズさえ決めなければスマートなのになと思いながらもそれも彼の良さかと思いつき言うのを辞める。
相変わらずお人好し脳天気少年だ。