紫音とは最寄駅が近い。


次の朝、1限めんどくさいと思いながらも眠い目を擦って紫音が乗っている車両に乗り込んだ。


「おはよ」

「おはよう、なぎ眠そうだね」
  
「まあ一限だしね、すぐ目覚めるよ」

「うん」


いつもの会話。
普通の日常。またそんなものに嫌気が差す。
  


お互いに少し無言の時を過ごすうち、ふと紫音の様子がいつもと違う気がした。 



「紫音?」


穏やかな、そしてマイナスな感情は表に出さない紫音には珍しく、苦しげな表情を浮かべる彼女が目に映った。


「何かあった?」



「ううん、何もない」

「ほんと?無理はしないでね」



重苦しい沈黙の時間が流れる。


「ねえなぎ?」

紫音の声が震えている気がする


「大学、行きたくない、どこか全然違うとこに行きたい」


何を思ってその言葉を発しているんだろう。


「ごめ「行こう」


反射的に紫音の言葉を遮る


いいじゃないかどこか遠く。


わたしだって行きたい。


こんな日々わたしだって本当に飽き飽きしている。

きっと遠くに行ったところで何も変わらない。とりあえずわたしはまたいつものくだらない日々に戻るだけだ。


でも紫音はきっと違う。


何かに耐えきれなくて、どうしようもなく漏れた悲鳴なのだろう。


遠くに行くことで彼女の日々は少し楽になるかもしれない。


「どこでもいいよ、大学なんて休んでなんぼだから。どこか遠くに行こう」