「ここの公園には小さい頃よくきたことがあるけど、こうやって夜景を見るのは初めてじゃない?」
手すりに寄りかかりながら奏はこちらを向いてから大きく息を吸う。
「ねぇ、少し話をしてもいい?」
奏は急に少し声のトーンを下げて、なぜかこちらとは別の方向を見て聞いてくる。
僕は何と返答したかは覚えていないが肯定の返答をしたはずだ。
「私はさ、吉人には隠してたんだけど結構いじめられてることが多かったんだ……。」
奏とはクラスが違かったのと、周りの目が気になるということでクラスの状況は見られていなかったのもあり、奏の口から出た発言は衝撃的だった。
「それこそ、男子からの発言も多かった。特になんで吉人なんかとって言うのも多かったなぁ。今思えばああいうのって嫉妬から来るものなんだろうね。」
ごめん。と一言、言うことしかできなかった。
「いや、これは吉人のせいじゃないよ。私がバンドでボーカルやってることについても言われたし。」
どうやら奏は僕の知らないところで色々耐えながら生きてきたようだ。
「あぁ、別に吉人に謝らせたくてこんなこと言ったわけじゃなくてさ、色々知っておいて欲しかったの。」
風になびく彼女の白いワンピースは、風に従ってゆっくりと揺れている。
「いつも通り、接してくれればいいんだ。今は別にそんなことには困らされてないし。」
奏はやっとこっちを向いたがその目にある粒には夜景が映っていた。
「ねぇ、吉人。周りに人いないよね?」
僕は周りを見て、誰もいないことを確認して頷くと奏は僕の胸元に思いっきり頭を寄せてきて泣いた。
「奏、気づいてあげれなくて悪かったな……。自分のことにばっか気にしすぎて、お前のこと気にしていられてなかったし、何もやってやれなかった――」
「そんなことないよ。一緒に音楽をできたってことが私の支えだったんだよ……?だから吉人は立派に私のために動けていたんだよ。だから、いつも通り私に接してくれればいいんだよ。」
奏はそのまま僕の胸元に頭を押しつけたまま言葉を続ける。
「あの時、吉人と一緒に音楽をやってたから私は今もこうやって生きられてるんだと思う。多分吉人と知り合ってなかったら今頃私は今のあのメンバーみんなと会う前に死んでいたかもしれない……。」
死んでいたかもしれない。その言葉には確かな重みがあった。
「奏、じゃあ僕がバンドを辞めてから辛かっただろ……。ごめん、本当に……本当に、ごめん。」
気づけば僕の目にも涙が浮かんできていた。
「ねぇ、もう1回だけ線香花火の勝負しない?」
しばらく経ってから奏は僕の胸元から顔をどかして、袋から2本の線香花火と点火棒を出した。
夜景の見える公園のベンチに座り、僕と奏はお互いに線香花火に火をつける。
ポッと小さな火球がお互いの線香花火につく。
「今日の夕方みたいに大人数でやるのもいいけど、こうやって静かに二人でやるのもいいよね。」
夜景を線香花火を片手で持ちながら、二人でぼーっと眺める。
「吉人はまたこうやってバンドやってて楽しい?」
「今は楽しいかな。学校に行かなくなってから一番楽しい瞬間かもしれない。」
「ならよかった。私たちもどうやったら戻ってきた吉人が楽しめるかって議論してた時期もあったし……。」
バンドメンバー全員が僕のために色々なことを考えてくれていたのだ。
「昔もここでこうやって花火したよね?あの時に吉人が言ってくれた言葉を今そのまま返すよ。『諦めなければいつかはどうにかなる。』だよ。」
そういえば昔、奏と僕とお互いの親でこの公園で集まって花火をした時に奏が何か相談をしてくれたことを思い出した。
何を相談してくれたのかは正直覚えていないが、奏が言ってくれたセリフを言ったのは覚えている。
「あの言葉も私の助けだったんだよ。あの時から私は色々なことに悩んでたんだよね……。」
でも、と言って奏は付け足す。
「何回も言うけど吉人が気づかないうちに私を助けてくれてたから私は今もこうやって楽しく生きられている。だから、今度は私の番だよ。愛宕祭の公演が終わって夏休みが終わったら、また学校においでよ。何かあっても私が手を差し伸べてあげる。」
この愛宕村に来てから確かに引きこもっていた時よりも、色々と前向きにできるようになった気がしている。
「奏、僕のことばっか考えすぎて無理はするなよ?」
「別に無理じゃない。恩返しだから。」
話しているとジュッと火球が落ちる音がする。
線香花火の方へ目をやってみると2つとも火球が落ちていた。
お互いに見ていなかったのでどっちの火球が先に落ちたのか分からない状況になってしまった。
「どっちが先に落ちたか分からな――奏、何笑ってるんだよ?」
「いや……なんか面白いなって思っちゃって。ふふふ。」
奏の静かに笑っている姿に釣られて僕もなぜか笑ってしまった。
「あ、今日も月が綺麗だよ。満月だね。」
奏が指差した先にはまん丸で黄金のように輝く満月があった。
「今日は満月か……。確かに綺麗だな。」
そう呟くと奏はなぜか少し不貞腐れたような顔をしていた。
手すりに寄りかかりながら奏はこちらを向いてから大きく息を吸う。
「ねぇ、少し話をしてもいい?」
奏は急に少し声のトーンを下げて、なぜかこちらとは別の方向を見て聞いてくる。
僕は何と返答したかは覚えていないが肯定の返答をしたはずだ。
「私はさ、吉人には隠してたんだけど結構いじめられてることが多かったんだ……。」
奏とはクラスが違かったのと、周りの目が気になるということでクラスの状況は見られていなかったのもあり、奏の口から出た発言は衝撃的だった。
「それこそ、男子からの発言も多かった。特になんで吉人なんかとって言うのも多かったなぁ。今思えばああいうのって嫉妬から来るものなんだろうね。」
ごめん。と一言、言うことしかできなかった。
「いや、これは吉人のせいじゃないよ。私がバンドでボーカルやってることについても言われたし。」
どうやら奏は僕の知らないところで色々耐えながら生きてきたようだ。
「あぁ、別に吉人に謝らせたくてこんなこと言ったわけじゃなくてさ、色々知っておいて欲しかったの。」
風になびく彼女の白いワンピースは、風に従ってゆっくりと揺れている。
「いつも通り、接してくれればいいんだ。今は別にそんなことには困らされてないし。」
奏はやっとこっちを向いたがその目にある粒には夜景が映っていた。
「ねぇ、吉人。周りに人いないよね?」
僕は周りを見て、誰もいないことを確認して頷くと奏は僕の胸元に思いっきり頭を寄せてきて泣いた。
「奏、気づいてあげれなくて悪かったな……。自分のことにばっか気にしすぎて、お前のこと気にしていられてなかったし、何もやってやれなかった――」
「そんなことないよ。一緒に音楽をできたってことが私の支えだったんだよ……?だから吉人は立派に私のために動けていたんだよ。だから、いつも通り私に接してくれればいいんだよ。」
奏はそのまま僕の胸元に頭を押しつけたまま言葉を続ける。
「あの時、吉人と一緒に音楽をやってたから私は今もこうやって生きられてるんだと思う。多分吉人と知り合ってなかったら今頃私は今のあのメンバーみんなと会う前に死んでいたかもしれない……。」
死んでいたかもしれない。その言葉には確かな重みがあった。
「奏、じゃあ僕がバンドを辞めてから辛かっただろ……。ごめん、本当に……本当に、ごめん。」
気づけば僕の目にも涙が浮かんできていた。
「ねぇ、もう1回だけ線香花火の勝負しない?」
しばらく経ってから奏は僕の胸元から顔をどかして、袋から2本の線香花火と点火棒を出した。
夜景の見える公園のベンチに座り、僕と奏はお互いに線香花火に火をつける。
ポッと小さな火球がお互いの線香花火につく。
「今日の夕方みたいに大人数でやるのもいいけど、こうやって静かに二人でやるのもいいよね。」
夜景を線香花火を片手で持ちながら、二人でぼーっと眺める。
「吉人はまたこうやってバンドやってて楽しい?」
「今は楽しいかな。学校に行かなくなってから一番楽しい瞬間かもしれない。」
「ならよかった。私たちもどうやったら戻ってきた吉人が楽しめるかって議論してた時期もあったし……。」
バンドメンバー全員が僕のために色々なことを考えてくれていたのだ。
「昔もここでこうやって花火したよね?あの時に吉人が言ってくれた言葉を今そのまま返すよ。『諦めなければいつかはどうにかなる。』だよ。」
そういえば昔、奏と僕とお互いの親でこの公園で集まって花火をした時に奏が何か相談をしてくれたことを思い出した。
何を相談してくれたのかは正直覚えていないが、奏が言ってくれたセリフを言ったのは覚えている。
「あの言葉も私の助けだったんだよ。あの時から私は色々なことに悩んでたんだよね……。」
でも、と言って奏は付け足す。
「何回も言うけど吉人が気づかないうちに私を助けてくれてたから私は今もこうやって楽しく生きられている。だから、今度は私の番だよ。愛宕祭の公演が終わって夏休みが終わったら、また学校においでよ。何かあっても私が手を差し伸べてあげる。」
この愛宕村に来てから確かに引きこもっていた時よりも、色々と前向きにできるようになった気がしている。
「奏、僕のことばっか考えすぎて無理はするなよ?」
「別に無理じゃない。恩返しだから。」
話しているとジュッと火球が落ちる音がする。
線香花火の方へ目をやってみると2つとも火球が落ちていた。
お互いに見ていなかったのでどっちの火球が先に落ちたのか分からない状況になってしまった。
「どっちが先に落ちたか分からな――奏、何笑ってるんだよ?」
「いや……なんか面白いなって思っちゃって。ふふふ。」
奏の静かに笑っている姿に釣られて僕もなぜか笑ってしまった。
「あ、今日も月が綺麗だよ。満月だね。」
奏が指差した先にはまん丸で黄金のように輝く満月があった。
「今日は満月か……。確かに綺麗だな。」
そう呟くと奏はなぜか少し不貞腐れたような顔をしていた。