「なんで……」

 昨日絞め殺した女が、朝食を食べるかと起こしにきた。
 一晩、失神したとはいえ最低限の睡眠をとり、酔いが醒めた頭で喜秋は考え直す。どうしてあそこまで腹が立ったのだろうか自分でも理解できない。
 宅飲みして寝泊まりする程の仲だったが、恋愛に類する関係ではなかった。本来ならば、彼女の交流範囲に口を出す権利などない。しかし男とホテルに入るのを見た瞬間、怒鳴り込まなかったのが不思議なくらい、怒りと不快感を抱いたのだ。
 細い首には、締め上げた痕が、下手糞な刺青のような形でしっかり残っている。

「何か食べる? お味噌汁飲む?」
「水でいい……」

 キッチンテーブルの上には、シリアルと缶詰のフルーツ、ヨーグルト。朝から平然とカツ丼を食べたがる彼女にしては珍しく軽い物だ。

「誰かさんのおかげで喉の通り悪てなぁ。反省しちゃーるんなら、スカーフ買うてきてね」