結局、その動画はわたしが周りの人にぺこぺこと頭を下げているところまでしっかり映されていた。こんなめったにない出来事を逃すものか、という執念が感じられた。
「どうだった?」
「ぱ、パンツ見えてなくてよかった」
「そこ? たしかに危険なアングルだけど」
くすりとナナちゃんが笑ったので、思わずどきりとする。彼女がわたしに笑いかけてくれることなんてそうない。同性でも見惚れるほどに整った顔立ちやオーラに圧倒されると同時に、漠然といやな予感もしていた。
「なにへらへらしてんの? バカみたい」
やっぱり、きた。
瑠衣ちゃんの言葉はいつもチクチクしている。
「ナナが言いたいのはそういうことじゃないでしょ」
「……ごめん」
謝ると、余計苛ついたように瑠衣ちゃんが舌打ちをして「セト」とそばにいた男型のアンドロイドに呼びかけた。セトと呼ばれたイケメンのアンドロイドがはい、と返事をする。
「このバカに説明して」
「はい。ナナさま及びマスターが申しているのは、貴女が接触したのがアンドロイドであったことから、それについて貴女がどう思ったのかを伺っているのです。なぜかというと――」
そこまで言われて、わたしもようやく理解できた。
それはあまりにも幼稚な質問で、それでいてこの世界ではとても重要なことだった。
「貴女がアンドロイドを所持していないからです」
八つの瞳がこちらを見つめている。
まるで責められているように感じて、わたしは黙って俯くことしかできなかった。