「あの、それで、なんで知ってるの?」
「ん?」
「わたしが駅で、その……階段から落ちたってこと」

 自分で死にかけたと明言するほど惨めなことはないと思う。あえて言い換えてたずねたわたしに、ナナちゃんと瑠衣ちゃんが顔を見合わせた。こいつはどこまで察しが悪いのだろう、とでも言いたげに。


「アズラ」
「はい」

 ナナちゃんの玲瓏な声に反応したのは、メイドよろしく後ろに控えていた女型のアンドロイドだった。伏し目がちに立っているさまはまるで居眠りをしているようにも見えたけれど、アズラと呼ばれたアンドロイドはナナちゃんからの突然の呼びかけにも瞬時に反応した。


「スマホ」
「どうぞ。ナナさま」

 アズラからスマホを受け取ったナナちゃんが、すいすいと操作をして表示させた画面をこちらに見せてきた。


「これ、映ってるのあまりでしょう」

 見せられた画面をのぞき込む。
 そこに映っているのは、わたしのよく知る最寄り駅の風景だった。その中心には、階段から投げ出されて落ちていく、この高校の制服を着た女子高生が映し出されていた。動画はどうやら人の合間を縫って階段の上から撮ったらしく、わたしの顔は誰かの頭に重なって隠れていた。だけど見る人が見たら、これはわたしだとわかるくらいには特徴が出ている。

 瑠衣ちゃんはすでにその動画を見ているのか、興味なさげに枝毛探しを再開していた。
 そんな彼女の横でわたしは息を詰めて、動画を食い入るように見つめた。