真っ暗な店内。
 紫の光をボワッと放つお母さんのペンダントだけが輝いていた。
「お母さん、お母さん、お母さん……」
 何度呼んだって、返事は無い
 当たり前だけど、自分のせいだけど、心が追いつかない。
 これまでお母さんが私に呼ばれて返事してくれなかったことは無かった。
 確かに、運動会とか授業参観とかお母さんは来なかった。寂しかった。
 でも違う、来なかったのではなくて、来れなかったんだ。
 勉強も教えてくれて、遊んでくれて、私の話を聞いてくれた。
 優しくて、綺麗で、でも笑った顔は可愛くて、仕事もできて、ご飯は美味しくて、お客さんにも愛される……
 完璧なお母さんだった。
 なんで私はあんなことしたんだろう。
 大好きなお母さんの約束を破った。
 私もいつかお母さんの所へ行った時、どうやったら胸張っていられるだろう。
 私はいつの間にか床に落ちていたペンダントを拾い上げた。
 そしてそれをぎゅっと握る。
 最初からわかっているはずだ。
 わたしにできることは……
「このお店を継ぐこと……」
 だよね……?お母さん。
 今日は「繋ぎ屋」は休みってことにしてある。
 だけど、今日も明日からもこのお店を楽しみに来てくれる人がいる。
 すぐには無理かもしれない。
 だけど、出来るだけ早く店を開けれるようにならなくてはいけない。
 「繋ぎ屋」のご飯を待ってる人がいる。
 お母さんが大切にしていたお客さんを今度は私が大切にしなきゃいけない。
 覚悟を決めなきゃいけない。
 私はペンダントを自分の首にかけた。
 でも、その前に私は行かなきゃいけない。彼のところに……