身分の差はあるが、兄同士が親友の郭寧妃と徐昭儀は同時期に宮中入りし、同じ殿舎(でんしゃ)に住んでいるということもあって仲が良い。

徐昭儀は子がいないため、郭寧妃の二人目の娘・汝寧公主(じょねいこうしゅ)を養女にもらっているのも、二人の仲の良さがうかがえる。

後宮では、年上の女性を姐姐(おねえさま)、年下の女性を妹妹(まいまい)と呼ぶものだ。だが、姉妹ごっこの裏で、互いが互いを陥れるため、卑劣な奸計(かんけい)の爪を()ぐ。

そのため、郭寧妃と徐昭儀の仲の良さは稀有(けう)である。

「妹妹、美凰、久しぶりね」

「郭姐、来てくれたのね。美凰の嫁入り支度を少し手伝ってくれない?」

「叔母上!?私は嫁に行きませんよ!」

「それは駄目よ!」

叔母上が何か言う前に郭寧妃が強く諭してくる。嫁に行かないなど論外だと。

「そうよ、郭姐の言うとおりだわ!それに、燕王殿下はそなたを好いているのでしょう?」

「誰からそんなことを……」

阿蘭(あらん)からよ。燕王殿下から熱烈な求婚を受けたそうじゃないの、青春ねえ」

「そうではなくて!阿蘭!どうして言ったのよ!」

阿蘭は幼いころから仕えてくれている美凰の腹心の侍女(じじょ)だ。王家(おうけ)の娘で、父の王 溥(おう ふ)は主上も一目置くほどの軍の実力者である。