秀快が言い捨てようとした瞬間、威圧感のある声で遮られる。

声の主は、

「主上……」

「主上に拝謁いたします」

「父皇(ちちうえ)に拝謁いたします」

主上は碽貴妃の手を取り、座らせる。

「秀快、徐氏を王妃に迎えることは許さない」

「な、なぜですか！」

「碽貴妃、徐氏、余は秀快と話すことがある。二人だけにせよ」

「承知いたしました」

二人が退出したのを見て、洪武帝は話し出す。

「秀快、余が建国した当時、共に手を携(たずさ)えてきた臣下たちを遠ざけているのは何故だかわかるか？」

洪武帝は自身の老いを感じながら、自身が去った後を温厚すぎる皇太子に任せることに心配するようになった。
心配しすぎるあまり、功臣(こうしん)たちを疑うようになり、処刑しだした。皇帝をしのぐほどの権力を持たないようにするためだ。

「重臣たちをのさばらせないようにするため……」

「その通りだ。あの女子は徐(じょ) 達(たつ)の娘、重臣の娘なのだ。余の言いたいことが分かるな？」

「父皇の言いたいことは分かります……ですが、美凰はとても慎み深く、正妻(せいさい)として娶りたいのです！」

「そんなにあの娘を娶りたいのか？」

「はい」