――次の日――

美凰は碽貴妃に呼ばれ、長春宮へと訪れた。

「碽貴妃さまに拝謁いたします」

「楽になさい」

「感謝いたします、碽貴妃さま」

礼を言い、椅子に座りながら碽貴妃の顔色を(うかが)うと、不機嫌そうな表情をしていた。

「今回は助かったわ。礼を言うわね」

不本意そうに礼を言う姿を見て、苦笑する。
普段、気位が高く、人に頭を下げるということをしない碽貴妃が礼を言ったのは、美凰が盈容公主のために策を講じたからだ。



『盈容を救うためにはどうしたら良いというの?』

『まず、主上に盈容公主さまを殉葬したいとお願いするのです。もちろん皇后さまのためと訴えてください』

『何ですって!?公主を殺す気!?』

『お静まりを。盈容公主さまだけでなく他の公主さまも皇后さまのために殉葬を願っていると切実に訴えてることが重要です。そうすれば、主上は皇后さまとの約束を思い出すでしょう』

『やはり公主を殺す気なのね!誰か!この者を打ちなさい!』

『お待ちを!最後までお聞きください!皇后さまは葬儀の規模を縮小するように願っておりました!一番に除外されるのは殉葬でございます!ですが、主上はお嘆きになられるあまりに約束を忘れてしまっているのです!』

『……というと?』

『皇后さまの慈悲深さを思い出せば、願いを叶えるために殉葬を取りやめるはずですわ』

こうして、美凰の策を演じた碽貴妃は無事に娘が殉葬されるのを免れた。