「何ですって!?我が公主に死ねというの!?」

ぱんと乾いた音が響く。碽貴妃が美凰の頬を()(ぱた)いたのだ。

「公主さまを逃がしてはいけませんと言いましたが、死ねなどとは一言も言っておりません。なぜ、私が公主さまを逃がしてはいけないと申し上げるのかお分かりになりませんか?」

「無礼者!田舎娘(いなかむすめ)のくせに貴妃に向かって何という口の利き方なの!?」

「気分を害されたのであらば謝罪します、申し訳ございません。ですが、公主さまを逃がしてしまえば、碽一族は宗室(そうしつ)に歯向かったとして誅殺(ちゅうさつ)されるでしょう。そうなれば、一族のみならず燕王殿下や貴妃さま、しまいには公主さまも探し出され殺されてしまいます」

「ならば……どうしろと言うの?我が子が殺されるのを黙ってみろというの……?」

「私に良い考えがございます」

虚ろな目がこちらに向く。

「公主を、盈容を、……救えるの?」

「もちろんでございます」

「分かったわ。公主を救うのが最優先よ。悪いけれど、秀快の秀女選抜は後日行います」





――乾清宮――

「主上、貴妃さまが御目通り願いたいとおっしゃられています」

「貴妃が?通してやれ」

皇帝付き首席宦官(しゅせきかんがん)は、はい、と返事して扉の方へ行き、碽貴妃を入れる。