気がつくとミトは花畑の中心にいた。
 そこは現実世界で波琉と会って以降見なかった、夢の世界と同じ場所だ。
 しかし、違うのはそこに波琉がいないということ。
 ミトはこの花畑のどこかに波琉がいるのではないかと探し回るが、どこにも波琉の姿は見つけられなかった。
 途方に暮れるミトに冷たい感覚が襲う。
「ひゃ!」
 足下を見れば水がちょろちょろとどこかは向かって流れていた。
 散々夢を見てきたが、このように水が流れていたことはなかった。
 ここは夢の世界ではないのかと疑問に思うミトは、水が流れる方向へ歩いていく。
 最初は少なかった水量が次第に多くなり、川へとなっていく。
「この先になにがあるのかな?」
 期待と恐れの混じった感情は、興味の方に傾いた。
 意を決して向かったミトが見たのは湖。
「すごく綺麗……」
 水は透き通り、湖面がキラキラと輝いている。
 水面を覗き込むと、大きな建物が映り込んでいた。
 しかし、実際に建物は建っていない。
 首をかしげるミトが水の中に手を入れると、大きな水圧で引きずり込まれた。
 ゴボゴボと口から泡があふれ出す。
 もがくミトは息が続かず、次第に意識が遠のく。
『波琉……』
 こんな時でも思い浮かべるのは波琉の姿なのだなとミトはどこか冷静に考えていた。
『夢の中で溺れるなんて波琉が聞いたらなんて言うだろう……』

 意識を飛ばしたミトが目を開けると、ミトは波琉の腕の中にいた。
「は、る……」
「ミト」
 俯いていた顔を上げた波琉は静かに涙を流していた。
 ミトはそっと波琉の頬を撫でる。
「なんで、泣いてるの……?」
 ぼうとした意識のまま問うミトが視線を移動させると、他にも見知らぬ人たちがいる。
 見知らぬ人に見知らぬ部屋。
 窓の外に見える空は虹色に輝いており、たくさんの龍が飛んでいる。
 少しづつ鮮明になっていく意識の中で波琉が苦しそうにささやいた。
「ミト、君は死んだんだよ」
 そう言われ、ミトは大きく目を見開いた。