するりと、涙が頬を滑った。
「意味なんかなくても、生きていていいのかな。」
「何となく生きてみようよ。そしたら案外、明日なんて簡単に来るのだから。焦らなくていい。例え、周りから見たら遅い速度でも、それが自分の全速力ならばそれで良い。周りの意見を、過度に気にしなくていい。自分なりのペースでゆっくりと生きて行けば、何の問題もない。立ち止まったっていい。戻ったっていい。最後にまた、前を見つめたら良いのだから。」
「…ありがとう、あやめ」
「また辛くてどうしようもなくなったら。そのときは、またこの杜へ案内しよう。」
意識が、遠のいていく。あやめの、美しくて強い緋色の瞳が、煌めきながら私を見つめていた。
「弱さをさらけ出す強さを持て、人の子。」