「…ずっと、強くなりたいって思っていた。独りでも耐えられるくらいの強さが。」
「癒喜に必要なのは、その強さじゃない。」
「どういうこと?」
「弱音を吐く強さが、今の貴方には必要なんじゃないかな。弱音を吐くことは、強いからできるんだよ。」
「…。」
「素直に助けてだとか、自分が今何に怯えているのかだとか。それらを言える強さが、癒喜には必要なんだと思う。」
「そう、かな。」
「人は、いつだって誰かの心を壊して生きていく獣。それが、自分か他人かの違いがあるだけ。けれど、他人が傷付いているときに私達は声をかけてあげることはできるのに、自分自身に声をかけてあげることはしない。だから、助けを待つことしかできない。」
「それは、みんなそうなんじゃないの?」
「みんなよ。人を傷付けるのが人なら、傷付いた人を癒してあげられるのも、皮肉なことに人しかいない。」
頬を叩かれたような衝撃だった。
「人間は、三種類に分けられていると私は思っていて、人を泣かせる人、泣いている人に声をかける人、それを傍観する人。癒喜には、泣いている人に声をかけてあげられるようなそんな大人になってほしい。どんな形でもいい。居場所がない子に、意味なんかなくても生きていて良いのだと伝えて、居場所を与えてあげてほしい。そうしたらきっとそこが、貴方の居場所にもなるから。」