周りを見ると、十五歳くらいの女の子が、美しい緋色の瞳を煌めかせてこちらを見ていた。
「いらっしゃい。人の子、名前を教えてくれない?」
「…癒喜。貴方が、私をここに呼んだの?」
「そうだよ。癒喜が、すごくもったい無いことをしようとしていたから、私の世界へ呼んだの。」
「貴方は、一体…。」
「私は、あやめ。人の子はよく私を、妖怪と呼んでいる。」
「妖怪…。ここは、一体どこなのですか。」
「この杜は、私が創った世界。この杜で話した事は、全てこの中に閉ざされる。外や、他人に出ることはない。だから、全てを吐き出しなよ。癒喜の苦しみを、私にちょうだい?」
「…私の話なんて、面白くも何ともないと思うけど。」
「それは、癒喜が決めることじゃないから。だから、話してくれないかな。」
「…わかった。」
 いつからだっただろうか。自分が、周りと少し違うと感じはじめたのは。高校生になる前、中学校で私はいじめられていた。
「障害者」
「異常者」
投げつけられた罵声と画鋲。捨てられた上履き。苦しかった。何度大人に言っても信じてもらえない。母には、迷惑をかけたくない。そんな下らない思いと、壊れていく精神。生まれてこなければよかったと。死んでしまいたいと何度も思った。けれど、死ぬ勇気なんかなくて。そのくせ、自分の人生を恨む気持ちを捨てられないのだ。気付いたら私は独りぼっちで、孤立していた。寂しくなんかない。寂しいと思うから寂しいのだ。大丈夫。私は、独りでも生きていける。涙が流れているような気がするけれど、きっと気のせいだ。苦しい。苦しい。それでも、耐えなければ。独りでも平気だって思わなければ。どうして生まれてきたのだろう。答えのない問いかけを繰り返して、精神を削る毎日。生きるということは、残酷だ。寂しくないと自分に言い聞かせ、抑えつけた感情は一体どこへ行くのだろう。言葉にならず、ため息となって消えた私の思い。独りになることが怖いのなら、最初から求めなければいいのだ。友達なんかいらない。必要ない。何も信じたくない。全てを、疑わなくては。周りも、自分も信じない。いらない。何もいらないから、何も与えないで。