思い出すと、やっぱりまだ辛い。
 涙が溢れそうになる。
 こんな弱い私でも、これを乗り越えたら強くなれるのかな。
「そうか。それで?お前は何をやったんだ?」
 えっ。
「それだけ、ですけど」
「嘘をつくな!維那ちゃんと冬麦ちゃんは悪口を言われたって話してるんだ!」
 やっぱり伝わらなかった。分かってはいたけど、伝わらなかったんだな。
 ガラガラガラ。
 ドアが開く音がして、そっちを見ると、維那と冬麦と月野和先生がいた。
 私は維那と冬麦を見ることができなくて俯いた。
「こっちは話聞きました」
「はい。心音ちゃんからも」
 こんな時までちゃん付けしてくる先生が憎たらしい。
「うん。じゃあ、今日で終わりにしようね。はい、二人とも頭下げて」
 維那と冬麦が頭を下げる。
「ほら、お前もだよ」
 先生が私の頭を掴んで俯いていた頭をさらに下げさせる。
 えっ、なんで?なんで私が頭を下げる必要があるの?
 意味が分からなくて、理解できなくて。
「はいっ。これで終わり。じゃあ、これからは仲良くしてね」
「教室に戻ろっか。では、月野和先生、うちのクラスの子がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
 なんで謝るの?謝らないといけないの?
 私が悪いみたいじゃん。私だけが悪者みたいじゃん。
 そう思ったら勝手に涙が出てきて、
「すみません。ちょっと、トイレ行ってきます」
 それだけ言い残して私は廊下に出た。
 最後に見た先生の顔が、よそいきの笑顔が、世界で一番憎たらしかった。