先生の都合で、話し合いは三時間目の授業中に行われた。
 六年一組と書かれたドアが目の前にある。
 やっぱり怖い。足が震えてきて、鼓動が速くなる。
 それでも、
『頑張って、行っておいで』
 涼晴くんが背中を押してくれるから。
 未来は自分自身の手で変えられることを知ったから。
 頑張れ、心音!
 私は自分だけの太陽を見つけるために、一歩、また一歩と踏み出した。
 そこには怒った顔の緑野先生がいた。
 その顔を見るだけで少し警戒してしまう。
「やっと、来たか。はぁ~。お前、ほんっと手のかかるやつだな」
 ため息交じりにそう言われた。
 先生に言われたくないし!
 落ち着け、落ち着け。
 私は深呼吸をして、先生の方を向いた。
「それで、あの、話し合いをするためにって聞いたんですけど」
 この教室には緑野先生しかいない。
 そのせいでいつもより広く、静かに感じる。
「その前に、先生と二人で話そう」
「えっと、それはなんでですか?」
 意味が分からず、首をかしげてしまう。
「お前が、二人にどんなことをされて、どんなことをしたのかを聞きたいんだ」
 そんなこと言ってるけど、結局先生は私がなにを話しても真剣に聞いてくれることはない。
 私はそれを痛いほど知ってる。
 なにを言っても、信じてくれない大人たちを相手に、いじめられっ子は日々戦ってるんだよ。
 いいかげん、分かってよ。
 目の前にいる子の表側だけじゃなくて、裏側も弱いところも見て、それで判断してよ。
 大人はどうせ分かってくれないって、諦めて、ためこんで。次第に誰にも心を開けなくなる。
 それが、子供にとって一番辛いこと。
 またダメだったって、諦めてばかりの人生なんかつまらないでしょ。
 私は今から大人と一対一で戦うよ。
 分かってくれなくてもいい。
 伝わらなくてもいい。
 ただ分かろうとしてほしい。
 無視しないでほしい。
 目を背けないでほしい。
 ただ、それだけだから。
「じゃあ、最初から全部話しますね」