1,私の気になるあの人と学校に行きたくない理由
 学校に行く道の途中。
「学校、行きたくないなぁ。」
 俯きながら呟く。
 私の気持ちを代弁しているのか、最近は曇り空が多い。さらにどんよりしてしまう。
「わっ!」
「うわっ!、ビックリした~。もう!やめてよっ」
 後ろから驚かされるの、今ので何回目なんだろう。
 何回もやられているのにいまだに驚いてしまう私って……。
 そう思いつつ、少し嬉しく感じてしまう自分がいる。
 なんでかというと、この人、私の気になっている人だからです!
 江波涼晴(えなみすばる)くん。
 私と同じクラスで、隣の席。
 人気者でいつも誰かに囲まれているんだ。
 あっ、挨拶しないと!
「おはよう、涼晴くん」
「うん。おはよう」
 いつもの優しい笑顔で言ってくれる彼。かっこよくて、私より背が高くて。
 あっ、もちろん、それだけじゃないよ。
 運動神経が良くて、いつも面白いことを言ってはみんなを笑わせてくれる。
 すごく良いとは思うんだけど……。たぶん、人気者で近寄りがたいからなのかなぁ。話しかけにくいっていうか、なんていうか。時々近寄りがたいオーラ?みたいなものを感じる。
「心音。どうしたの?」
 はっ、いけない!
 せっかく涼晴くんと話せる大切な時間なのに。
「ううん。なんでもないよ。それにしても修学旅行、楽しかったな~」
 そう。私たちは昨日修学旅行に行ってきたの。
「うん。そうだな!ホテル広くてきれいだった。おみやげもたくさん買えたし!」
 満面の笑顔で共感してくれる。
「なんと言っても一番は~?」
「ホテルのごはん!」「日光東照宮!」
「えっ、嘘!ホテルのごはんおいしかったじゃん!」
「いやいやいやいや、日光東照宮がメインだからね?」
 お互いバチバチになる。それでも私たちを包むのは優しい空気。
 じっと見つめあった後、どちらからともなく笑いがこみ上げてきて笑ってしまった。
「まぁ、楽しかったし?」
「そうだね!」
 うんうんと頷きながら昨日のことを思い出す。