「心音!どこに行く!」
 追いかけてくる先生。
 こうやって私は、私の心は追い詰められているんだよ。
 少しは気付けよ。
 分かろうとしてよ。
 自分の事分かろうとしてくれない、理解しようとしてくれない。
 そんな人に話しても意味ないよ。
 来ないで。
 そして、私にもう関わらないで。
 ほっといてよ!
 言葉にならない叫び声がどこかに逃げていった。
 トイレに着いた。
 教室とトイレはすごく近いのに、遠く感じた。
 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
 苦しい、吐き気が止まらない。
 これは息切れじゃない。
 ー過呼吸だ。
 初めてのことで頭が真っ白になる。
「取り合えず、はぁ。落ち着いて。深呼吸」
 自分に言い聞かせるように、そう呟く。
 深呼吸すると少し楽になった。
 でも、涙は止まらなかった。
 窓があることに気付いた。
 だけど、窓は古くて開かなくて。
 絶望の淵にいるみたいで、必死にしがみついてももうもどってこれないような気がして。
 その時、
『大丈夫。大丈夫だよ。俺がお前の太陽になるから』
 涼晴くんの声。
 そうだよ。
 この声、涼晴くんの声だよ。
 なんで気付かなかったんだろう。
 いつだって私のヒーローは涼晴くんだけだった。
 私は太陽を、自分の太陽を見つけるまでは生きると、そう心に決めた。