でも、
 「けど、向こうは悪口を言っていないって、あなたが言ってたって言ってるの。……朱璃ちゃんはもう席に戻っていいよ。」
 なんで。
 なんで、向こうの言ったことは信じて、私の言ったことは信じてくれないの?
 「違います!違うんです!」
 「違う!なぁ。お前が言ったんだろ。お前が!」
 怖い。
 怖くて足がすくみそうになる。
 涙が出てきそうになる。
 その時、廊下で維那と冬麦がこっちを見ながら笑っているのが見えた。
 もう、嫌だ。
 教室で大きい声を出すからみんなが注目しているし。
 「おっ、もう昼休みか。行くよ。」
 さっきとは全然違う態度。
 私は何も言わず、駆け出した。
 早く、早く。
 誰もいない、私を責める人がいないところへ。
 ……一人に、なれた。
 「はぁ、はぁ。」
 息が乱れている。
 今ならなんの恐怖もなく、飛び降りられるかもしれない。
 そう思った。
 だけどここは二階だ。
 ダメ、か。