下校中、涼晴くんに全部話した私は、泣いてはいなかった。
 「そっか。そんなことがあったんだ。」
 「うん。でも私は、涼晴くんに助けてもらったんだよ。」
 少し恥ずかしいけど、ちゃんと言えた。
 「うん?なんで?」
 「それは秘密。」
 「え~。」
 涼晴くんが口をとがらせる。
 あっ、そうそう。
 明日の昼休みにもう一回話し合うことになったんだ。
 って言っても、今日は話してないけど。
 「ううん。気にしないで。」
 心配かけたくなくて、へらっと笑った私。
 「大丈夫?」
 「大丈夫だよ。」
 「ねぇ、本当に大丈夫?……俺、心音のこと心配だよ。」
 眉を下げて、しょんぼりとした表情で聞いてくるから、思わず笑いそうになってしまった。
 「ありがとう。でも本当に大丈夫。心配かけてごめんね。」
 「そう?無理しないでね。じゃあ、また明日。」
 こんな時まで見せてくれる優しい笑顔に泣きそうになった。
 「うん。また、明日。」
 私は家に向かって歩き出した。
 その足は、なぜだかいつもより軽かった。