分からなくて、委員会の教室についた途端、堪えていた涙があふれだした。止まらなくて。教室には誰もいなくて。
 もうどうなっても良いと思った。
 逃げてもいい。前に進まなくてもいい。辛いから楽になりたい。
 遠くから足音が聞こえる。
 「うっわ、泣いてんじゃん。」
 「このままだと、うちらのせいにされるよ。逃げよっ。」
 維那と冬麦は逃げていった。足音が遠くなっていく。
 ひどいよ。
 こっちは逃げたくても、逃げられないんだよ。
 目をそらしたくても、そらせないんだよ。
 なんで、私のことをいじめた二人が逃げてんの?
 今起きてる状況から目をそらそうとするの?
 辛い、苦しい。
 背負っているもの全部おろして、楽になりたい。
 楽になりたい。
 「もう、やだよ。」
  私は窓に近づいた。
 その時、
 『頑張って。』
 昨日、言っていた涼晴くんの言葉がまた聞こえてきた。
 そうだよ。
 なにやってるの、心音。
 泣いてもいい。自分は辛くてもいい。
 けど、みんなを悲しませちゃだめだよ。誰かを辛い気持ちにさせちゃだめだよ。
 どんなに辛くても、頑張るしかないんだよ。
 未来の自分のために前に進むしか、走り続けるしかないんだよ。
 「大丈夫。大丈夫だよ。涼晴くん。」
 私は自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
 しばらくして、緋緒里と純玲、朱璃が来た。
 三人とも、探してくれていたみたいで、息が乱れている。
 「大丈夫?」
 温かい言葉をかけてくれる、純玲。
 背中をさすってくれる、緋緒里。
 そして、遠くから見ていてくれる、朱璃。
 私はこんなに素敵な友達がいて、幸せだ。本当に、幸せだ。
 自分が自分のこと嫌いでも、そばにいる人が私のこと大切にしてくれるなら、もうそれでいいんだ。それで、いいんだよ。
 私は教室に戻った。
 涼晴くんはなにかあったのを察して、明るく話しかけてくれた。
 四人の優しくてあたたかい眼差しは、まるで迷惑かけてもいいんだよと言ってくれてるみたいだった。