……遅れちゃった。
 家を出ると、こっちに向かって走ってくる涼晴くんがいた。
 続きを話すため散歩をしようということになり、二人でゆっくり歩いた。
 「明日、学校に行きたくないよ~。」
 明るい空気で終わるように、愚痴みたいな感じで吐き出した。
 「頑張って。向こうが悪いんだから、心音が背負う必要ないって。な?大丈夫。ほら、手出して。」
 言われた通りに手を出す。
 「はいっ。これ、どうぞ。」
 手を開くと、チョコが乗っていた。
 「ありがとう。あっ、じゃあ私も何か。」
 「いや、いいよ。あっ、もう時間だ。じゃあな。気を付けて帰れよ。」
 照れ隠しをするかのように、涼晴くんは走り去って行く。
 「涼晴くん!」
 名前を呼ぶと、優しい笑顔で振り返ってくれる。
 「また明日!」
 私に出せる精一杯の大きな声で言った。
 そしたら涼晴くんも満面の笑みで返してくれた。
 「おう!」
 明日、か。
 まだ一緒にいたかったな。
 もしかして。
 もしかしてだけど。
 私は、彼のことが好きなのかもしれない。
 私なんかじゃ手の届かない人に。
 「恋」をした。