帰りの会の途中に一組の月野和先生が来た。
 「うちのクラスの子ともめているのは誰かな?」
 その言葉を聞いた途端、朱璃が私の方を見た。
 うちの学年でケンカはいつものことだ。
 だから私は自分じゃないと思って前を向いていた。
 「分かんないのか。じゃあ、こっちから言う。小戸森さんと、香月さん。廊下に出なさい。」
 みんなの視線が突き刺さる。
 泣きたくなった。足が動かなかった。
 私は涙をこらえながら、重い足を引きずって廊下に出た。
 緋緒里と純玲も悪口を言われていたことから、一緒に来てもらった。
 二人を巻き込んで、迷惑かけて、私本当にダメだなぁ。
 自分を責めると同時に維那と冬麦には怒りがこみあげていた。
 私、何もしていないのに。
 勝手に悪口言ってきたのはそっちなのに。
 意味が分からない。
 私を悪者扱いしたいの?
 色々と考えながら、教室から出た瞬間、廊下にいる二人を睨む。
 廊下の隅っこで話し合いが始まった。
 「……、……。」
 先生に言ったのは、維那と冬麦なのに、何を言っていいのか分からないようで、沈黙が続く。
 気まずい空気に耐えられなくなった私は、口を開いた。
 「先生!」
 私は月野和先生に全てを話した。
 いつも悪口を言われていたこと。
 仲間はずれにされたこと。
 それに毎日耐えてきたこと。
 他にも、全部。
 二人は知らないフリをしようとしているのか、いつものようにこそこそと話している。先生が何か言っている。
 多分二人に確認してるんだろう。
 涼晴くん、もう帰っちゃったのかな。
 気分屋だから帰ってしまっているかもしれない。
 話し始めてから十五分。
 二人は全く話さなかった。
 それでも、自分たちはやっていないということだけは言っていた。
 二人が目の前のことから目を背けるほど、こっちはどんどん逃げ場を失っていくんだよ。
 でも、ほとんどの人は気付かない。
 だから、この世からいじめがなくならない。
 今を楽しめない人が増えていく。
 その一方で、誰かを傷つけてでも今を楽しみたい人も増えていく。
 みんなが平等に幸せで楽しい日々を送れたらいいのにな。