高校に着くと絶え間ない喧噪が俺を出迎えた。

廊下でたむろし無駄話に熱をあげている奴ら、校則違反の生徒を注意している教師。

今、俺が姿を消したところで、だれも気づかないし気に掛けないのだろう。


表情が乏しくコミュニケーション能力が極端に低いため、機嫌が悪いと誤解されることが多々あった。

中学の時の知り合いがいない高校を選んだから、知り合いもいなくていつも独り。


独りにはもう慣れたけれど、ほんのたまに居場所を見失ったような息苦しさを覚える。


席に着き、やることもなく頬杖をついてぼーっと外を見ていると、チャイムが鳴り担任が入ってきた。


「おはようございます」


一方通行の挨拶のあと、担任は両腕を広げるようにして教卓に手をつく。


「えー、SHRの前にひとつ連絡があります。今日からこのクラスに転校生が来ることになりました」


担任の発言でクラス中が一瞬水を打ったかのようにしんと静まり返り、それから一気にざわめく。


俺が情報に疎いだけか、あるいは今の今まで内密にされていたのか、転校生が来るというのは初耳だ。

男か女かすらも知らない。

夏休み間近のこの時期に転校なんて、変なタイミングだ。

……まぁ、俺には関係ないんだけど。