「えぇ!?トウマの偽物!?」

特別クラスの教室……ではなく学食の一角。
そこで瀬戸ユウリさんが驚きの声を上げる。
放課後。
生徒が部活や思い思いの時間を過ごしている中で僕と瀬戸さんは学食のテーブルの一つを占領していた。

「そいつ、命知らずな訳?」
「名前だけを使って好き勝手しようとしたみたいだよ?」

偽物は詐欺まがいの事をしていたので警察によって逮捕された。
怪異を専門としている部署に属している刑事の長谷川さんによると他にも余罪があるらしい。

「ところで、爆発札以外の札を貼ったって何を貼ったの?」

興味津々という表情で瀬戸さんが尋ねてくる。

「髪が抜ける呪い」
「……ごめん、もう一度」
「髪の毛が抜ける呪い」
「……その偽物って剛毛?」
「そんな感じだったかな」

なんともいえない表情を浮かべている瀬戸さんだが、実際の偽物をみていないからイメージできないんだろう。
長谷川さんによって逮捕された時、伸びていた髭はなくなり、頭や足、腕までつるつるになっていた姿は不衛生の姿よりさらに不気味に思えた。
まさに。

「ツルツルのタコだよ」
「それは、それで、なんかシュール」
「瀬戸さん!休憩時間終わりだよ!」

食堂の入口からジャージ姿の女子が声をかけてくる。

「わかった~、あ~、楽しい時間ももう終わりだ」
「仕方ないよ。体育祭が近いから」

僕達の通う学校は夏休みを終えて一か月後くらいに体育祭、その二週間後くらいに文化祭が控えている。
文化祭は教室のほとんどを行事に使用することから特別クラスも一時的に解散になってしまう。