『6月13日水曜日
 リスカしていることが、先生にバレた。先生は親に言わないと約束してくれたはずなのに、親に漏らした。約束は約束で、守らなくちゃいけないはずなのに。どうして先生は漏らしたのかな。先生はどうしてリスカに気付いたからと言って、私の話を聞こうとするのかな。辛いことがあれば言えって言うけれど、それはどうなのかな。先生は、親に漏らさないといった。なのに、漏らした。人との約束、生徒との約束よりも、自分の責務を優先して。もし私に何かあったら、本当は知っていました、なんて言って、責任を問われるのが嫌なんだよね。だから、親に漏らす。親に漏らすのなら、最初から私のリスカを見て見ぬふりをすればよかったのに。そしたらどちらも幸せだった。私のリスカは親にバレずに済んだし、先生は知らなかった、っていえば責任を問われなかった。先生だけ、いい思いをして、約束を破ったのに、誰にも怒られなくて、人を信じた私は唯一の心のよりどころが崩れていくのに。どうして、私は人を信じちゃったのかな。先生は約束を破るつもりで、親に漏らすつもりで私を心配しているふりをしていたのなら、関わってほしくなかった。他人に同情されるのって結構辛いというのにさ。先生は親に漏らしたことを謝ってくれたけれど、謝って済めばいいって訳じゃないのは知っているでしょ?どうして裏切ったのかな。私は悪くないと思うのに、悪いのは私で、悪くないのは先生なんだ。約束を破ったのに、悪くなくて、人を信じたのに、悪者になって。やっぱり、先生なら信じてもいいかなって思った私が軽率だったから、私はいけないのかな。だったら、もう私は人を信じないよ。絶対にもう誰もね、信じないから。だって人は自分の保身のために動いていて、すぐに裏切るなら、人を信じて痛い思いをするのなら、表面上だけ信じて、信じないほうがよっぽどいい。』『6月14日木曜日
 リスカやめろってまた言われた。やめろっていうのなら、リスカをしてはいけない理由を教えてほしい。』
『6月15日金曜日
 どうせ、親がリスカやめろっていうのはさ、保身?みたいなものだよね。自分の娘が自傷行為っていうのをやっているのが周りにバレて、どういう教育しているのかしらって言われるのが嫌なんだ。ただそれだけの理由でやめろっていう親ってさ、どうなのかな。』
『6月18日月曜日
 どうしても私にリスカをやめてもらいたいらしい。相談する相手がいないの?だったら、カウンセラーに聞いてもらいましょう。精神科医に行きましょう、だってさ。ウザ。何善人ヅラしてんの?別に、私は話を聞いてほしいわけじゃないのに。どうせ、カウンセラーの人たちだって、そうなんでしょう?表面上だけ、心配していて、あとで親にリークする。自傷行為だっていけないことって決めつけて、やめさせるんでしょう?どんな些細なことでも相談しましょうとか、自殺防止とかいうけどさ、本当に自殺に追い込んでいるのは、そうやって言い出した人だと思う。だって、そういう人にとっては、自傷行為や自殺はいけないことだから。でもさ、だれが、自傷行為や自殺がいけないって言ったの?内閣総理大臣?天皇?違うよね。誰も、やっちゃダメなんて提言していない。いつの間にか、いけないってことになってしまったんだよね。』
『6月20日水曜日
 なんで、誰も仮面を壊してくれないの?なんで、誰も気付いてくれないの?もう、仮面を被るのに疲れたよ。早く誰か気付いてよ!大きな声で泣きたい。早く楽になりたい。楽になりたいよ。』
『6月22日金曜日
 前に電車で見かけて、学校を一緒にさぼった娘、羅月心優って言うんだって。三嘴さんにいじめられているんだってさ。羅月さんを(そし)ったり、いびったりしているんだって。クラスメイトの誰かが言っていた。なんかそれで納得。そりゃあ、電車で震えて、学校行きたくないって思うわけよ。』
『6月25日月曜日
 別に、明確な理由があるわけじゃないけど、死にたいって思う日が多くなった。疲れているからかな。心が、重くて、身体の所々が痛いからかな。』
『6月27日水曜日
 仮面、被りたくない。頭が痛い。学校、行きたくない。』
『6月29日金曜日
 クラスメイト達も中学校に慣れてきたらしい。汚い言葉が吐かれるようになった。死ね、とか殺すとか。死にたいとか。本当に死にたいのかな。違うのなら、そういう言葉って言うものじゃないよね。ここに希死念慮がいるんだから。』