新学期が始まって、一週間が経った。まだ、学校には行けていた。三嘴からのいやがらせが、まだ本格化していないから。
 あの日、学校が始まって、帰りに笑愛に聞かれた。
「羅月さん、自傷しているでしょ」と。
 心臓が凍り付いた。どうして、分かったのだろう。
「言わぬは言うに勝るとはこのことだね。いやー、同類だからさ、分かるのよ。本能というかなんというか、ね?」
 何も言えない私が、彼女に警戒したのかと思ったのか、彼女は、
「そんな警戒しなくてもいいって。誰にも言わないし」と笑った。
 ちょっと見せてねー、と勝手に私の左袖を捲る。
「ええー、噓でしょ⁉跡残ってないなんて。どうやるの、え?すごい技術」
 この娘、綺麗な顔して言動がいろいろ怖い。人の袖を急にめくるのはやめてもらいたい。
「ま、同類だし、仲良くしようね」
 笑愛は私の左手を取って強引に握手とも言えない握手をした。
 それがすべての始まりだった。
 そして、この出会いが煌々と輝きだす日々の小さな、きっかけ、となった。