あいつが遺した遺書を読んでから、録音機の内容を聞いて俺は受験会場へと急いだ。
 なぁ、と心の中で呟く。お前の言うとおりだよ、と。でも違うことがある、と。
 お前は、俺が病気を患っていると書いてあったのは正解だけど、俺は姉貴とは違う。
 死ぬことを決めつけていないからな。
 俺の病気は、五年生存率がゼロパーセントじゃないんだ。発症して一年ちょいで、亡くなる人もいれば、十年、何十年生きる人もすごくだけど、稀にいる。ホントに稀だけど。俺は、患って二年半が経ったが、まだ、生きている。まだ、生きていけている。だから、死ぬと決まったわけじゃないんだと思う。ただ、亡くなった人が多いだけで。ただ、患って亡くなった人が多いだけで。なぁ、お前は知っているか?俺の病気の生存率は、三パーセントあるんだってこと。ゼロじゃないこと。三もあるんだぞ。だから、まだ、俺は死ぬと決まったわけじゃないんだ。お前が亡くなって、一年と数か月たったが、まだ、俺の‘やつ’は進行が速くはない。できることが少なくなった。死にたいと思う日が多くなった。それだけのことだ。だけど、俺は、まだ、見ていたい。お前が言う退屈な世界を。息苦しい世界を。俺は、生きていたい。だから、お前は見守ってくれよ。
 そんで、俺はお前の行きたかった高校に行って、お前の生きたかった人生を歩んで、お前に会ったらその話をしてやるから。