なのに、なんだよ。なんで、飛び降りたんだよ。いつの間にか救急車に乗せられ、病院に連れられた。
 俺は、どうして止められなかったんだよ。あの時みたいに。
 いや、違う。俺は、気付いていたんだ。あいつが何かを計画していること。でも、信じたくなかった。信じられなかった。声をかけられなかった。やめろ、なんて言えなかった。
 一体どうすれば正しいのか、分からなかった。一体、どうしたらよかったのか。
 きっと、あいつをこの世に留めておく言葉なんてなかった。あいつを止められる人なんて、言葉なんて、どこにもなかった。
 だって、あんなに苦しんで、泣いていたから。
 十三時に、家庭科室に来て窓見てよ、と言われて、握手を交わして、別れたのに。
 たった、七十分が経っただけなのに。まるで、俺があいつの手を離したことを後悔させるように。
 なんでだよ、なんで、飛び降りたんだよ。いや、彼女が自殺を図った理由は分かっている。
 ‘何か’が落ちてきて、何も考えずに校庭へと向かって、血まみれになっていく、あいつを見て。左手には、紙が握られていて。
『……それと、何かあったら、左手を見てよ』
 握られた左手にある紙を見たら、例の、質問が書かれていて。
 あいつの、手本のような達筆な字で。
『十三個目の質問。君は、私が死んだら泣いてくれる?
 今まで、ありがとう。ずっと大好きだよ。永川笑愛』
 なんで、そんなに質問、に拘るんだよ。なんで、こんな風に死ぬんだよ。なんで……。