姉はそれから病状は悪化したが、死ぬことはなかった。
 姉は自分の病気のことを詳しく調べたのだろう。入院してから、目をはらすことが多くなった。医師に言われたりするときはへらへらしているというのに。自分にはできないと決めつけて。
 自殺者のニュースが流れた日に見舞いに行くと必ず、この人は傲慢だだの、生きられない人はたくさんいるのに、だの、命譲れ、だのと文句を言った。
 姉のことが分からなかった。
 どうして、そんなに自殺した人を嫌悪するのか。どうして、死んじゃいけないのか。
 姉は何でも決めつけていた。何でも、我慢すればいいじゃない、と言っていた。
 その言葉が嫌だった。我慢だとか、頑張れだとか。励ましのような言葉が、俺は嫌いだった。姉はとても面倒臭い人だった。だから、姉のことが、嫌いだった。
 姉は、あの娘と違って醜かった。ずっと、誰かを羨んで、嫉妬して、文句言って、決めつけて、自殺者を憎んで。姉は、自分に未来がないのを決めていた。