嗚呼、やっと分かった。本当の、死にたい理由。
 母よりも長く生きていたくないから。
 母が私よりも先に死んだら、私はもう一度、父が死んだときのような悲しみに浸ることになる。
 暗くて、寒くて、どうしようもないくらい悲しくて寂しい感情に浸るのが怖いから。
 母がいなくなったら、今度こそ独りになってしまうから。
 誰も、温もりをくれなくなってしまうから。
 人を殺してしまう可能性も怖いけれど、それ以上に、独りになりたくなかった。
 だから、私は、自殺の道を選んだ。
 父が死んだときの感情から逃れるために。
 この‘正しさ’から解放されるために。
 もう、仮面を被らぬために。
 この、辛さから、解き放たれるために。
 早く楽になりたかった自分を報ってあげるために。
 これ以上、危ない知識をつけないために。
 将来、誰かを殺めぬために。
 母や心優に迷惑をかけないために。
 そして、身にふりかかる全ての悲運の先手を打つために。