心優の掴もうとする手が目に映る。それと同時に私は口を動かす。
「心優、ありがとう。さようなら」
心優の手が空を掴む。私は、下へと重力に従って落ちてゆく。
私の言葉は彼女に届いただろうか。
もし、思い残すことがあるのだとすれば、繋君にありがとう、と言っていない。あの時、止めてくれてありがとう、と。
「きずな、くん。止めてくれてありがとう。そして、ごめん……な……さい」
遠くで、誰かの悲鳴が聞こえる。遠くで、私の名前が聞こえる。
大丈夫、怖くない。目をつぶれば怖くない。死ぬことだって、怖くないよ。
だって、暖かいから。怖くない、暖かいから。左手に温もりが感じられるから。大丈夫。安心する。
「心優、ありがとう。さようなら」
心優の手が空を掴む。私は、下へと重力に従って落ちてゆく。
私の言葉は彼女に届いただろうか。
もし、思い残すことがあるのだとすれば、繋君にありがとう、と言っていない。あの時、止めてくれてありがとう、と。
「きずな、くん。止めてくれてありがとう。そして、ごめん……な……さい」
遠くで、誰かの悲鳴が聞こえる。遠くで、私の名前が聞こえる。
大丈夫、怖くない。目をつぶれば怖くない。死ぬことだって、怖くないよ。
だって、暖かいから。怖くない、暖かいから。左手に温もりが感じられるから。大丈夫。安心する。