覚悟を決めたはずなのに、自殺前夜はたくさん泣いた。
 ずっと大きな声で泣きたかった。
 けれど、それでも自殺前夜は大声で泣けなかった。ただ、声を押し殺して、肩を震わせて泣くだけ。
 本当は死ぬのが怖い。
 でも生きるのも怖い。
 本当は死にたくない。
 本当は生きていたい。退屈な世界だけど。
 でも早く楽になりたい。死にたい。
 でも本当はずっと生きていたい。
 本当はずっと、誰かの傍にいたい。
 誰だっていいから。
 誰かの温もりを感じていたい。
 けれど、私は死ななくちゃいけない。
 いつか、罪を犯して、国に、殺されてしまうから。
 この先身にふりかかる不運の先手を打つだけ。ただそれだけのこと。

 けれど、そうだとしても、怖くて仕方がないんだ。