残りが僅かになった。今日は‘あの場所’へは行っていない。だってどうせ明日行くんだもの。
 残りの時間、何をしようか。何もすることはない。
 いつでも死ねるようにと部屋は綺麗にしておいたし、教材やなんかもすぐ捨てられるようにと、まとめてある。
 遺書も、書き終えた。ありがとう、とたくさん書いた。貯金もほとんど使ったし、あとやっていないのは録音だけだ。
 ふと、脳裏に蘇った。小学六年生の時の、唯一の記憶だ。
 あの時、私よりも年上の娘から放たれた、忌々しい記憶。あの娘が放った悲痛なあの娘の心境。恐らく、あの娘は重病を患っている。あの娘の言葉。生きたいと思っている人しか持っていない瞳で言い放った、言葉。