夏休みに入ってからの(笑愛)というのは、四六時中怠惰という甘い蜜を吸って、どう死のうか考えていた。
あと、一か月ちょい、か。
 そろそろ、覚悟を決めなくちゃいけない。
 宿題を夏休み前に終わらせ、やることをなくした私は、自殺集を開いては閉じ、また違う危険な本を開いては読んではまた仕舞う、という繰り返し作業をしていた。
 暇だな。
 外はかなりの大雨だった。何も考えずに傘を差しながら外に出て、無心で歩いていた。行き先を決めずに歩いていると、見慣れた姿があった。
 羅月心優。私の知っている、唯一死にたい、と思っている人だ。でも、前に進みたいと思っている、偉い人。
 彼女が誰もいない公園のベンチで座っていた。
「どうして、こんなことになっちゃったんだろうなぁ」
 本当にね、どうして私はこんなことになってしまったのだろう。
 どうして、死にたくなってしまったんだろう。
 が、その前に、羅月さん、大丈夫か、ずぶ濡れだぞ。ありゃ下着もろともビショビショコース間違いなしじゃん。
「羅月さん?」
 振り向いた彼女は泣いていた。そして私は、いつの間にか傘を地において、手を広げていた。
「雨っていいよね」と呟く。一体私は何をやっているんだ?
 羅月さんはどうやら親に自傷行為のことがバレた様子だった。
 このままではだめだと思って、私の家に連行する。羅月さんをもうすでにびしょびしょだったから、傘をさしてあげなかったが、彼女は私と相合傘をしたいらしい。けど、羅月さんビショビショやん。今更さしたって無駄だって。
 結局、私は彼女と相合傘して帰った。彼女には、熱いお風呂と新しい着替えをプレゼントし、私は彼女を泣かせた。
 だって羅月さんが今にも壊れそうなんだもの。
 だから、彼女の話を聞く条件に泣かせた。これ以上彼女に我慢させたら、私のように狂ってしまうから。誰か一人でも、彼女の全てを肯定する人がいなければ、私のようになってしまうから。
 彼女は私と違って泣いていいし、死にたいと思ってもいい人だから。彼女には、きっとその資格があるから。
けれど、彼女は‘思ってはいけないこと’を夜寝る前に言い放った。
「どうして生きなくちゃいけないんだろう」と。
 嗚呼、どうして、どうしてと思う。
 どうして、こう思ってしまう前に一緒じゃなかったのかと。どうして、離れたのかと。
 ごめん、ごめんなさい。
 その六文字が、私の頭を駆け巡った。
「ごめん」