心優には、自分の本性を見せて良いかと考えたが、いつも思いとどまってしまった。
 彼女が自分から離れて行ってしまうのが怖いから。彼女に呆れられるのが怖いから。彼女の前でも仮面を被っていた。
 仮面を外したかったけれど、外せなかった。信じられなかった。
 だって、信じたら、裏切られるから。信じたら、裏切られた時に傷ができるから。それに私は見かけだけ。きっとそれは、徒花のように空っぽだから。
 けれども罪悪感に苛まれて、彼女に自分が贈られたい言葉を送ることにした。残り十三週間のすべての金曜日に。自分が贈られたい、十三の言葉を。
 羅月さんが、私に手紙の話をしたとき、彼女はまだ贈り主が誰だか気付いていなかった。だから、
「手紙を贈っている人は羅月さんのことが大好きなんだよ」と言った。
 本当のことだったから。彼女はこんなにも短い時間で、私の中のかけがえのない人物になってしまったから。
 彼女は、
「笑愛、いつか貴女のことを教えてね」と言ってくれた。
 暖かい言葉。
 嬉しく思った。彼女となら、もう少し頑張れるかと思ったほどだった。
 そう、私は彼女の一言に救われた。認めたくなかったけれど。
 聞いてみたかった。同類である羅月心優に。答えてほしかった。
 私は君にとって、ただの同類じゃない、と。友達、だと。
 けれど、私には信用する勇気がなかった。
 私は、彼女を友達だと認めたくなかった。
 認めてしまえば、失った時に辛い思いをするだろうから。認めてしまえば、彼女が私から離れたときに、私はとても悲しくなるはずだから。
 ねぇ、君はこんな私でも、友達でいてくれる?
 ねぇ、君は私が死んだら、泣いてくれる?
 ねぇ、君は私が死んでも笑って許してくれる?
 心の中で彼女に問うた。当然ながら答えは返ってこなかった。
 もし君が生きてくれるのなら、死なないでいてくれるのなら、私はもう少し頑張れる気がする。
 君のおかげで、もう少し生きていたいと思える気がする。
 そう、君のおかげで。

 だから、あと少し、あと少しの辛抱だ。