夏休みが明けてから初めての金曜日を迎えた。笑愛の誕生日まであと八日だった。不思議な手紙は机の中に入っていたが、その手紙の言葉を見たとき、胸騒ぎがした。
そして、夏休みが明けてから、笑愛とあまり話していない。それに気付いたのか、三嘴はまたいやがらせをエスカレートさせた。
「心優、アンタ、とうとう笑愛に見捨てられたのねー。いい気味だわ。大体アンタごときが笑愛と付き合えるとでも思っている訳?アンタはせいぜいアタシの‘オモチャ’として学校に来てればいいのにさ。ま、笑愛もアンタなんかよりほかの子とつるんでいたほうがいいと思ったみたいでよかったわ」
授業が終わって、笑愛が教室から出るのを見計らって、三嘴が誰にでも聞こえるような声で言う。教室に先生がいない今は三嘴の王国だった。久しぶりに、強く、強く唇をかみしめる。
自分の感情を殺して。そして、強く、強く、手を握り締める。口の中では、血の味がした。
大丈夫、これくらい。これくらい大丈夫だから。
「それにさー、アンタなんて生きていてもどうせ無駄でしょ?馬鹿だし、ブスだし、死んじゃえばいいのに」
「三嘴さん、言葉の使い方間違ってない?」
いつの間に返ってきたのか笑愛は、自分の席に座って本を読みながら言い放つ。クラスメイトの誰もが彼女を見て頬を強張らせている中、沢海だけが、肩を震わせながらも笑いをこらえていた。
「まずさー、生きていてもどうせ無駄って語句だけど。他人の命の価値なんて君が決めるものじゃないでしょ?ていうか君は決められないよね。あのね、誰にも決められないよ、命の価値なんて」
「はあ?でも笑愛!コイツなんてクズじゃん」
「はいはい、お口閉じましょうねー。あとクズかどうかも君は決められないでしょ?じゃあ次ね。馬鹿だしブスだしって語句はねー。うーん、そうだなー。羅月さんは、バカじゃないでしょ。楽観的なとこはあるけど。んで、ブスって言葉はね。うん。内面は外見を映す鏡って言葉知っているよね?もちろん知っているよね?君は確かに容姿には恵まれているかもしれないけど、内面はとてつもなく醜いよ。今は君の取り巻きたちがいるからいいかもしれないけど、いずれ君の周りには誰一人いなくなる。君と比べると、羅月さんのほうが外見も内面もよっぽどきれいだよ。ていうか、羅月さんって元から可愛いし。それに、君がそんな性格で、こういう行動を起こしても、まず君の想い人君は振り向いてはくれないだろうし、それどころか軽蔑されると思うけどね。ねーあお……」
「わ、分かったわよ!分かったから笑愛黙ってよ!」
顔を真っ赤にしながら笑愛の言葉を遮る三嘴。
多分、笑愛の言葉の最後で(遮られたけど)クラスメイトの誰もが三嘴の想い人が誰かわかっただろう。あお、で始まる苗字の男子はこのクラスに一人しかいない。想い人本人は気付いていないと思うけど。
「三嘴さん、今回はまあ目をつぶるけど、次はないからね」
どうして、笑愛は三嘴のターゲットにならないのか。それは彼女が一年の頃に自分よりも大きい男子の胸倉を掴んで、言葉の使い方を注意したから。
そして彼女は、三嘴よりも多分強いから。
人は、自分よりも弱いものを蔑み、自分よりも強い相手には恐れ慄く。
きっと三嘴は笑愛のほうが自分よりも強いことを知っている。だから、笑愛を敵に回さない。
そして、夏休みが明けてから、笑愛とあまり話していない。それに気付いたのか、三嘴はまたいやがらせをエスカレートさせた。
「心優、アンタ、とうとう笑愛に見捨てられたのねー。いい気味だわ。大体アンタごときが笑愛と付き合えるとでも思っている訳?アンタはせいぜいアタシの‘オモチャ’として学校に来てればいいのにさ。ま、笑愛もアンタなんかよりほかの子とつるんでいたほうがいいと思ったみたいでよかったわ」
授業が終わって、笑愛が教室から出るのを見計らって、三嘴が誰にでも聞こえるような声で言う。教室に先生がいない今は三嘴の王国だった。久しぶりに、強く、強く唇をかみしめる。
自分の感情を殺して。そして、強く、強く、手を握り締める。口の中では、血の味がした。
大丈夫、これくらい。これくらい大丈夫だから。
「それにさー、アンタなんて生きていてもどうせ無駄でしょ?馬鹿だし、ブスだし、死んじゃえばいいのに」
「三嘴さん、言葉の使い方間違ってない?」
いつの間に返ってきたのか笑愛は、自分の席に座って本を読みながら言い放つ。クラスメイトの誰もが彼女を見て頬を強張らせている中、沢海だけが、肩を震わせながらも笑いをこらえていた。
「まずさー、生きていてもどうせ無駄って語句だけど。他人の命の価値なんて君が決めるものじゃないでしょ?ていうか君は決められないよね。あのね、誰にも決められないよ、命の価値なんて」
「はあ?でも笑愛!コイツなんてクズじゃん」
「はいはい、お口閉じましょうねー。あとクズかどうかも君は決められないでしょ?じゃあ次ね。馬鹿だしブスだしって語句はねー。うーん、そうだなー。羅月さんは、バカじゃないでしょ。楽観的なとこはあるけど。んで、ブスって言葉はね。うん。内面は外見を映す鏡って言葉知っているよね?もちろん知っているよね?君は確かに容姿には恵まれているかもしれないけど、内面はとてつもなく醜いよ。今は君の取り巻きたちがいるからいいかもしれないけど、いずれ君の周りには誰一人いなくなる。君と比べると、羅月さんのほうが外見も内面もよっぽどきれいだよ。ていうか、羅月さんって元から可愛いし。それに、君がそんな性格で、こういう行動を起こしても、まず君の想い人君は振り向いてはくれないだろうし、それどころか軽蔑されると思うけどね。ねーあお……」
「わ、分かったわよ!分かったから笑愛黙ってよ!」
顔を真っ赤にしながら笑愛の言葉を遮る三嘴。
多分、笑愛の言葉の最後で(遮られたけど)クラスメイトの誰もが三嘴の想い人が誰かわかっただろう。あお、で始まる苗字の男子はこのクラスに一人しかいない。想い人本人は気付いていないと思うけど。
「三嘴さん、今回はまあ目をつぶるけど、次はないからね」
どうして、笑愛は三嘴のターゲットにならないのか。それは彼女が一年の頃に自分よりも大きい男子の胸倉を掴んで、言葉の使い方を注意したから。
そして彼女は、三嘴よりも多分強いから。
人は、自分よりも弱いものを蔑み、自分よりも強い相手には恐れ慄く。
きっと三嘴は笑愛のほうが自分よりも強いことを知っている。だから、笑愛を敵に回さない。