夏休みが明けてから、席替えがあった。今回の席替えは籤引きで決めるものだった。私も含め、クラスメイトの誰もが、沢海と笑愛が離れるかどうか、胸を高鳴らせながら見物する。
 笑愛が窓側に座り、沢海が籤を引いた時、クラス中に拍手に包まれた。
 そう、またもや沢海と笑愛は隣同士になったのである。よく見ないと分からないが、二人の頬が少し緩んでいるような感じだ。
 二人は素直じゃないのか、それともこの空気に乗っているのか、変な応酬が続く。
「沢海君、君はどれだけ私のことが好きなのかね?周りをうろちょろしていないで早く告白したらどうだい」
「……いい加減にしろ」
「笑愛ってばすごーい!もう隣になったの、何回目?」
 三嘴の野郎がわざとらしく聞いて取り巻きたちと笑い合う。
「もう五回目だよー」
「おい、沢海。お前ら、本当に何もないのかよ」
「……何もない」
「おー一瞬考えただろー」
 クラスメイト達が二人の仲を茶化して笑う。その時の笑愛はしっかりと仮面を被っていた。