「みーゆ!ねぇ、心優(みゆ)ってば。おーい、羅月心優(あみづきみゆ)!」
 遠くで聞こえる、もういないはずの、幼馴染の声。
 目の前の景色は、戻りたいと思っている過去。
 でも、戻らないということは知っている。知っている。

 ジリリリリ、とアラームの音が部屋中に鳴り響く。
 アラームなんて鳴らなくとも、とっくの昔から目は覚めていた。
 けれど、今日も身体がだるくて、起きられそうになかった。
 今日も、布団から出られそうになかった。
 布団から出られない日がどれくらい続いているのだろうか。
 学校に行けていない日が今日でどれくらい経っただろうか。
 今日が何日だとか、今は何時だとか、そんなのは知らないし、どうでもいい。
 部屋の壁に貼ってあるカレンダーは所詮、飾り物。日にちを確認するために貼られたものではない。
 そして、今日も胃の中がぐちゃぐちゃしていて、身体の節々が心理的、物理的に痛くて、頭は鈍器で殴られたかのように痛い。
 温かい琥珀色の日の光が窓から差し込むのを拒否するように、カーテンをぴしゃりと閉めた。
 今日も、朝が来たと思いながら自嘲する。
 どうすればいいのか、そんなのは分からない。頭の中に浮かんでいるのは一つだけ。
――しにたい、たすけて
 でも、誰も助けてくれないのは、身に沁みて、分かっている。分かっている。