夢を見た。とても昔の夢を。
「みーゆ、一緒に遊ぼう!」
「心優、ねえ聞いてよ。児相の奴がさ……」
「ねえ心優、ここを出たら、絶対に、絶対にお手紙を送るね」
嗚呼、私はまた、また過去を見ている。戻らない過去を。ずっと、戻らないかと思いながら、願いながら。
前に、進みたいのに。過去に、囚われたくないのに。過去を生きたくないのに。
ねぇ、笑愛。どうしたら、前に進める?自傷行為をやめれば、前に進めるかな。死にたいって思わないようにすれば、前に進めるかな。
ねぇ、どうやって、一歩を踏み出すの?
ねえ、どうやって、この負の感情から抜け出せるかな?
「笑愛、あの」
「何?」
「前に、前に進むにはどうすればいいの」
「どういう意味?」
彼女の声が少しだけ低くなったのを私は気付かなかった。
「変わりたい」
「……そう」
「死にたいだなんて、むやみに思いたくない」
「じゃあ、じゃあ。私から、離れないとね」
終業式が終わった帰り道に、笑愛は、悲しそうな笑みで、でも少しは混乱しているような感じで、私を見る。そして、まるでゾクリと背筋が凍るような、冷たい声を出して、私に言い放つ。
「君が、前に進みたいのならまずは私から離れたほうがいい。まずはその一歩から、踏み出すべきだよ。私は‘こちら側’の人間で、君の進みたい道には、行けないからね。君の進みたい道にいる人と仲良くなったほうがいい」
彼女の態度はまるでクラスメイトに向けるような感じだった。同類としての態度ではなく、クラスメイトとしての態度に変わっていた。
最近になってやっと、笑愛との見えない壁が薄くなったのに。
「笑愛、どうしたの。どうして、どうして離れなくちゃいけないの、どうして、」
彼女は、私の言葉を遮って、真っ直ぐと私を見る。
「希死念慮が傍にいて、前に進めるとでも思っているの?私は君の進みたい世界の人間じゃないんだよ。希死念慮といたら、君は前に進めない。だから、今のうちに、私から離れたほうがいい」
笑愛は、笑顔なのに、いつもの笑顔のはずなのに、彼女と私の間には見えない壁が、いつもより分厚い。
「じゃあまた、夏休み明けに。バイバイ」
いつもの、帰り道の分かれ道。いつもの挨拶。それなのに、その挨拶は突き放すような。
「ねぇ、笑愛」
「羅月さん、じゃあね」
いつもの笑顔ではなく、三嘴達に向けるような笑顔で別れを告げられた。
「笑愛、ねぇ」
伸ばした手で彼女を掴む。だけど、空を掴んだだけだった。
「みーゆ、一緒に遊ぼう!」
「心優、ねえ聞いてよ。児相の奴がさ……」
「ねえ心優、ここを出たら、絶対に、絶対にお手紙を送るね」
嗚呼、私はまた、また過去を見ている。戻らない過去を。ずっと、戻らないかと思いながら、願いながら。
前に、進みたいのに。過去に、囚われたくないのに。過去を生きたくないのに。
ねぇ、笑愛。どうしたら、前に進める?自傷行為をやめれば、前に進めるかな。死にたいって思わないようにすれば、前に進めるかな。
ねぇ、どうやって、一歩を踏み出すの?
ねえ、どうやって、この負の感情から抜け出せるかな?
「笑愛、あの」
「何?」
「前に、前に進むにはどうすればいいの」
「どういう意味?」
彼女の声が少しだけ低くなったのを私は気付かなかった。
「変わりたい」
「……そう」
「死にたいだなんて、むやみに思いたくない」
「じゃあ、じゃあ。私から、離れないとね」
終業式が終わった帰り道に、笑愛は、悲しそうな笑みで、でも少しは混乱しているような感じで、私を見る。そして、まるでゾクリと背筋が凍るような、冷たい声を出して、私に言い放つ。
「君が、前に進みたいのならまずは私から離れたほうがいい。まずはその一歩から、踏み出すべきだよ。私は‘こちら側’の人間で、君の進みたい道には、行けないからね。君の進みたい道にいる人と仲良くなったほうがいい」
彼女の態度はまるでクラスメイトに向けるような感じだった。同類としての態度ではなく、クラスメイトとしての態度に変わっていた。
最近になってやっと、笑愛との見えない壁が薄くなったのに。
「笑愛、どうしたの。どうして、どうして離れなくちゃいけないの、どうして、」
彼女は、私の言葉を遮って、真っ直ぐと私を見る。
「希死念慮が傍にいて、前に進めるとでも思っているの?私は君の進みたい世界の人間じゃないんだよ。希死念慮といたら、君は前に進めない。だから、今のうちに、私から離れたほうがいい」
笑愛は、笑顔なのに、いつもの笑顔のはずなのに、彼女と私の間には見えない壁が、いつもより分厚い。
「じゃあまた、夏休み明けに。バイバイ」
いつもの、帰り道の分かれ道。いつもの挨拶。それなのに、その挨拶は突き放すような。
「ねぇ、笑愛」
「羅月さん、じゃあね」
いつもの笑顔ではなく、三嘴達に向けるような笑顔で別れを告げられた。
「笑愛、ねぇ」
伸ばした手で彼女を掴む。だけど、空を掴んだだけだった。