「で、毎週金曜日に奇妙な手紙が入っていて、励ましの言葉が贈られているのね?」
 九通目が贈られた次の週に笑愛にあの手紙のことを話した。あの、毎週入っている、心に寄り添ってくれるような手紙のことを。
「うん。送り主に会ってお礼言いたいんだけど。あ、励ましじゃないよ、慰めの言葉だよ」
「どっちでもいいよ。けど、多分手紙を贈っている人は羅月さんのことが大好きなんだよ」
「好きなってもらうようなことしたっけ?」
 私の言葉に沈黙が流れた。けれど、すぐに笑愛がその空気を壊して続ける。
「さぁ?私に聞かないでよ。」
「それもそうだね」
「でも羨ましいなぁ、慰めてくれる人がいて。少なくとも送り主は羅月さんにとっての心の拠り所なんでしょ。私はいないからそういう人がいる羅月さんが羨ましい」
 笑愛は心底羨ましそうな顔をしていった。彼女は相変わらず仮面を被った笑顔だ。
「笑愛、いつか貴女のことを教えてね」
 出過ぎたことかもしれない。何しろ彼女は一線を越えて喋らたがらない。沢海君を除くクラスメイトの誰にだって、彼女は、少しからず距離を置いていたし、自分のことになるとうまく話を逸らす。
 自分の感情を言葉にするのは好きじゃない。
 彼女が自分のことを話してくれないことは分かっている。けれども伝わってほしかった。
 笑愛には、笑愛が自身のことを打ち明けても、受け入れられる人がいるということを。
 もしかしたら私は偽善者なのかもしれない。でも、それでもいい、それでもいい、とその時思えた。