『20×4年9月13日金曜日 永川笑愛 自殺実行日
 親愛なる沢海繋さまへ
 君がこの手紙を読んでいるということは、私はもう死んでしまっているのでしょう。
 色々ありがとうございました。お世話になりました。
 色々ごめんなさい。質問にも付き合ってくれてありがとう。
 もう二、三日したら、貴方のところに、荷物が届くと思います。その中身を見てください。
 永川笑愛』

『20×4年9月
 親愛なる沢海繋さまへ
 これからいろいろ迷惑をかけることになります。だから、先に謝っておくね。ごめんなさい。
 まず、君に録音機と日記を贈ります。録音機なんて、いらないとは思うけれど、私のワガママで贈らせてください。録音内容は、手紙の内容とほとんど同じ。手紙を声に出して読んだだけって思うかもしれないけれど、正直に読んだつもりだから。
 そして、録音機を贈ったのは、私が死んでも、君や心優の中で生きていたいからです。君の中でずっと生きていたいからというワガママで贈らせてもらいます。あと、君たち二人には正直に話したいと思ったから。日記を君に贈ったのは、君には隠し事をしたくないからです。そして録音機で、繋げてもらおうと思いました。

 今、君に遺書を書いている私はとても辛くて苦しくて、今にも死んでしまいそうな感じ。(それでも、それでも死なないのは多分私には覚悟がないからだと思う。)中学一年生の時の九月十三日、止めてくれて、ありがとう。あの時は嬉しかった。
 君に止めてもらった時、久しぶりに生きようと思いました。生きていたいと思えました。だからありがとう。
 けれど、私にはもう無理かな。
 もう、疲れちゃった。生きること、を含む何もかもが。仮面をかぶっているのが、辛くなっちゃいました。だから私は自殺を図りました。そして、私は生きていたらきっと、人を殺めてしまうから。わたしは、その可能性が怖くて、この道を選びました。
 沢海君ごめんなさい。本当にごめんなさい。
 本当は私も生きたいです。ずっとずっと生きていたいです。でも私は怖がりで、死ぬことよりも生きることのほうが怖いから、私は君と違って、生きる勇気がないから、自殺を図りました。
 ごめんなさい。

 あとね、沢海君。いつかの昼休み、慰めてくれて、ありがとう。隣に座って、背中をさすってくれて、ありがとう。傷の手当の時、天然水で傷口洗い流してくれて、ありがとう。スポドリと麦茶を買ってくれてありがとう。君が買ってくれたスポドリと麦茶は、私が飲んだ中で一番美味しかった。いい思い出だね。ありがとう。傷の手当ての手伝いもしてくれてありがとう。

 ねぇ、沢海君。私、ずっと思っていたことがあります。君の名前のこと。繋、っていう字。君にふさわしいと思って。
繋。意味は、つなぐ。結びつける。続ける。連ねる。つながる。関係する。そして、きずな。
 君は、きずな、という意味を知っていますか。動物をつなぎとめる綱っていう意味もあるけれど、もう一つあるの。断つにしのびない恩愛。離れがたい情実。係累。人と人との結びつき。
 いい名前だと思う、(きずな)君。私は、けい、よりも、きずな、のほうが好きです。だって、君は、私をつなげてくれたでしょう?私を明日へとつなげてくれたでしょう?君と、関係を築くことができたでしょう?君は私を助けてくれたでしょう?もしかしたら、私は君に恋をしていたのかもしれない。恋かは分からないけど、君のことは好きでした。一人の人間として。君が隣にいると、少しだけ、息抜きをすることができて、安心しまた。ドキドキとか、そういったものはなかったけれど、すごく安心することができました。もう少しだけ頑張れると思えたの。
 それと、とあることを、お願いをしてもいいですか?
 手紙を、繋げてほしいんです。月原先生、麗名、宮本さんと金子先生、あと、幼馴染達に手紙を届けてほしい。繋げてほしいの。みんな、〇×学院いっていると思う。だから、そこに繋げてくれないかな。人使いが荒くてごめん。
 あと録音機と日記は、もし君がこの世とお別れするときに、心優と私を繋げてほしいです。(だって君は病気で、死んでしまうかもしれないでしょう?)
 繋君。質問に付き合ってくれてありがとう。
 七月の七日に君とあそこで会うことができて、シャボン玉で遊んで、時間を託し合えて嬉しかったです。これから先、君は闘病が大変になるかもしれないけれど、君の明日が光り輝きますように。
 君の人生が幸多き時間になることを心からお祈りします。
 色々、お世話になりました。今までありがとうございました。そして、ごめんなさい。
 いつか君や心優にまた会えますように。 永川笑愛』