『20×4年9月13日金曜日 永川笑愛 自殺実行日
 親愛なる母上へ 
 娘が自殺して、多大なるご迷惑をおかけしたことをここにお詫び申し上げます。そして、今まで、ありがとうございました。

 私は貴女が言うとおり非情な娘です。だから、自殺しても納得がいくでしょう。だって、私は真心のない娘だから。でも、そんな娘から、お詫びと感謝があります。お詫びは三つ。感謝は一つ。まずはお詫びから。生まれてきて、ごめんなさい。きっと貴女は心優しい娘が欲しかったでしょう?死にたいなんて思わない、健全な娘が欲しかったでしょう?だから、ごめんなさい。生まれてしまってごめんなさい。二つ目は、真心(こころ)を捨ててしまってごめんなさい。非情な娘になってしまってごめんなさい。三つ目、自殺してしまってごめんなさい。私が死んでも、涙を流す人はいないでしょう?誰も私の死を悼まないだろうからいいけれど、貴女の周りが何かを言ってくるでしょう?どういう教育をしていたのだか何だか。そう言わせてしまってごめんなさい。つくづく出来の悪い娘になってごめんなさい。
 そして次に感謝を。私を生んでくれてありがとう。何度も生まれたことに疑問を持ったりしたけれど、後悔はしたことはないです。何度も死にたいとは思ったけれど、生まれたことを後悔していないから。ここまで育ててくれたことに、感謝を申し上げます。ありがとう。生んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。
 色々なことを話したかったけれど、私は勇気のある娘じゃないから、貴女に話すことができませんでした。でも、一つだけ、ここに告白します。
 私はもう一度、お母さんに笑ってほしかったです。
 お父さんが亡くなって、お母さんが笑わなくなってしまって、寂しかったです。私は、お父さんとお母さんの笑顔が好きで、二人が笑うと、私も幸せになりました。
 お父さんが亡くなって、お母さんが笑わなくなってしまったから、私もいろいろ頑張ったけれど、やっぱり私は出来損ないだから、上手くできませんでした。ごめんなさい。
 最後に、お願いがあります。出来の悪い娘でこんなお願いをするのはおこがましいとは思うけど、一つだけ、お願いを聞いてくれますか。聞いてくれるだけでいいです。
 ずっと褒めてほしかったです。頑張ったねって。今日も頑張って生きたねって。今日まで、命を繋げてきたことを褒めてほしかった。けれど、もう私は限界です。生きたくないです。もうこれ以上生きたくない。だから、自殺してしまいました。ごめんなさい。自殺してしまってごめんなさい。生まれてきてしまってごめんなさい。真心を捨ててしまってごめんなさい。
でも、私はずっと母のことが大好きでした。何を言われても、貴女のことは好きだった。母親だから、かな。
 だから、貴女に褒めてもらいたかったです。生きたことを。
 そして最後に、今までありがとう。本当にありがとうございました。自殺してしまってごめんなさい。 
 大好き。ずっと、ずっと大好きです。 永川笑愛』