胸のざわめきがする。 胸焼けではない。これはきっと恋。私は初恋をした。

倉本|《くらもと》ルウくんに

ルウくんは、小学五年生の頃にアメリカから引っ越してきた外国人だ。今、私たちは六年生。ルウくんのことを好きになったのは、五年生のニ学期。

 ルウくんとはたまに話すが、ルウくんにとって私はクラスメートとしか思われていないだろう。ルウくんはいつも笑顔で見ているこっちまで笑顔になれる。
 ある日、
「今日は席替えをしまーす」
 先生がそう言う。ルウくんと席が隣になるかも。少し期待をしてしまう。このクラスの人数は四十人だから、隣になる確率は低い。私はルウくんと隣の席になりますようにと願ってくじをひく。

 私の番号は九番だ。廊下側の席の前から四番目。本当は窓側の席が良かったが一番前でないなら良い席だろう。そして、移動する。隣はどこだろうとドキドキする。隣はルウくんだった。めちゃくちゃ嬉しくて飛び跳ねたいくらいだった。私は窓側の席でなくて良かった。神様に感謝した。
「よろしく」
「うん」
 席替えをして何日か経った。ルウくんとは、よく話すようになった。中休み、ルウくんに話しかけようとすると、

「何してるの?」

「何だ、ルウかよ。何だっていいだろう。外人はあっち行ってろよ」

 ルウくんが仲間外れにされていた。外人だからって言うのは差別だと思った。言い返したいけど勇気が出なかった。ルウくんにも話しかけづらい空気だった。ルウくんは少し辛そうに感じた。

 次の授業の五分休み。ルウくんはいつものように笑顔だった。本当はすごく辛いと思うのにすごいと思った。私はルウくんに思い切って、

「ルウくんって学校は楽しい?」

 と、聞いてみた。

「えっ?」

 ルウくんは驚いていた。

「ルウくんが転校してきて一年が経ったからもう学校も慣れてるかなって思ってさ」

「うん」

 ルウくんは嘘をついているように聞こえた。

「本当に?」

 私はいじめられているところを聞こうとした。力になりたかった。

「何で?」

 やはり、いじめられていることを言わないみたいだ。

「中休みにルウくんがいじめられているところを見ちゃったからさ…。ごめん」
 
 私は言ってしまった。

「見られてたのか。分かった。本当のことを言うよ。少し辛いけど友達もできたし、遊んだり、君と話したりして楽しいこともあるから頑張っていけるんだ」

 少し安心した。

「次にルウくんがいじめられているところを見たら助けてあげるから」

「うん。僕はただあの子たちと友達になりたいだけなんだよな…。」

 ルウくんは小声で言っていた。

 次の日の昼休み、またルウくんがいじめられていた。

「僕も入れてよ。どうして駄目なの?」

「やだよ。こんな外人とは。外人だから」

 私は勇気を出して、

「ルウくんを仲間外れにしないでよ。外人だからって言うのは差別だと思うけど。ルウくんは君たちと友達になりたいだけなんだよ」

「あっち行こうぜ」

 あの子たちは他の場所に行ってしまった。

「助けてくれてありがとうな。かっこよかったぜ」

「どういたしまして」

 そして、放課後。帰ろうとすると、あの子たちにルウくんと呼ばれた。

「ルウ、今までごめんな。あの後考えてさ。確かに、こいつの言うとおり差別だったんだ。それに友達になりたいなんて分からなくてごめんな。友達になってあげていいよ。こんな僕でいいなら」

 私はあの時、勇気を出してよかったと思った。

「うん」

 そして、あの子たちは帰った。教室には、私とルウくんの二人だけ。少し気まずい。

「君のことが好きなんだ」

「私も。付き合ってくれない?」

「うん」

「これからよろしくね」

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